テキスト | ナノ

「例えば、大きな手でわたしの頭を撫でてくれるとき。わたしは、わたし自身のからだがほんの少し削られて、代わりにほんの少しのきみが入り込んだような感じがする。ちょうど1000ピースのジグソーパズルのひとかけらを投げ捨てて、そのぽっかり空いた箇所に将棋の駒を無理矢理はめ込んだような、不思議な。最初は違和感を感じてもだんだん慣れていつしか「普通」になる、そんな感じ。
こんなことを、きみがわたしに触れてくれる度に思っているもんだから、わたしは最近、どんどんわたしが削られて、欠けたわたしの部分をきみが埋めていって、しまいにはわたしがきみになってしまう妄想に囚われる。ジグソーパズルには不釣り合いな駒が増えていって、あっという間にパズル板が将棋板にすり変わる。ありえないと分かってても、わたしはそれが怖くてたまらない。いつか自分がなくなっちゃうんじゃないかって。わたしという存在が真っさらになってしまうんじゃないかって。でもね、きみのためなら、わたしは消えてなくなったって良いよ。どうしようもなく怖いけど、わたしの抜け殻を使ってきみがきみでいられるならわたしは死んだって構わない。それくらい、きみが好きだよ」

馬鹿じゃねえの。開口一番、文字通り馬鹿にしたように鼻で笑う十四郎の耳たぶがほんのりと赤くなる。ああ、愛しいなあ。



愛するということ

20110521



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