テキスト | ナノ

四つ葉のクローバーを見つけるために、三つ葉のクローバーを踏み付けてはいけない。フランスだかイタリアだかの頭のカタイ人が言ったセリフらしいが、そんな言葉をどこかで見たことがある。残念ながら詳しいことは覚えていない。中学のときの図書室だったか、立ち読みした古本屋か、そんなところ。当時はふーんと流した気がする。それなのに、どうしてまた急に思い出したりなんかしたんだろう。

今しがた振ったばかりの男のアドレスと番号を電話帳から削除して、伸びをする。またやってしまった。彼のことは嫌いじゃなかったはずなのに。わたしを心底大事にしてくれたのに。また。
付き合い始めた直後は今度こそと思っていても、だいたい三ヶ月、早ければ一ヶ月でわたしは恋人に飽きてしまう。何が気に入らないわけじゃない。むしろ気に入っている。けれど、愛することができない。もうここまで来ると、一種の病気みたいなものなんじゃないかと思っている。とんだ持病だ。

「あ、銀ちゃん」
「なにお前、また別れたの」
「ごめん」
「はぁぁぁぁ?バッカじゃねえのか…良い奴だったんだろ?」
「次は頑張るから。次は絶対」
「次次ってな、そんなことばっかしてるとそのうちえらいことなるぞ」
「次こそ、頑張るから。じゃね!」

銀ちゃんがまだわーわー言っている中、言い逃げに近い形で電話を切る。もはやわたしが別れたときの恒例行事と化しているそれは、今回で何回目だろうか。銀ちゃんに呆れられるのは、今で何度目。

本当は、本当はとうの昔に気付いていた。結局わたしは、ほかの男を銀ちゃんの代わりにしてるだけだってこと。手に入れることのできない人の姿を、手に入れることのできる人に写してるだけだってこと。だから急にあんな昔見た言葉を思い出した。きっとわたしの周りは、今まで踏み付けてきた三つ葉のクローバーでいっぱいだ。
いっそのこと、銀ちゃんのことなんてとっとと忘れて別の人と幸せになりたい。でも駄目なのだ。いくら頭ではそう思っても、やっぱり銀ちゃんは三つ葉にはなれなくて。四つ葉のままで。
最悪。あんな半ニートのどこがいいの。わたしはあと何回銀ちゃんに電話すれば、彼をただの人に戻してあげられるんだろう。



ハローグッバイ

20110417



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