テキスト | ナノ
スパァン!!と小気味良い音をたてて戸が開いた。晋助が帰ってきたらしい。急いで彼の元に駆け寄ると優しく頭を撫でてくれる、この瞬間が私は大好きだ。幸せだなぁ。
テレビでは過激派とか危険だとか言われているが、私にとってはただの優しい晋助だ。ほら今だって私を膝にのせて煙管をふかしているし、その吐いた煙が私に少しでもかかったことなんてない。ね?優しいでしょう。
晋助はしばらく私を撫でたあと、また子ちゃんに呼ばれて面倒くさそうに出ていった。いい子にしてろよ、って。もちろん。晋助が戻るまでおとなしく布団で丸まってあっためておくね。だから早く帰ってきて、晋助。そしたら私、お風呂に入りたいな。
人間と呼ぶには余りにも獣じみた男と、獣と呼ぶには余りにも人間じみた女の話
「にゃー」
「あァ?何だ腹でも空いたか」
「にゃにゃー」
「風呂入れろってか、分かった分かった。今入れてやるからちょっと待ってろ」
20110212