テキスト | ナノ

自分からは絶対に離れて行かないだろうと決め付けていた人間が僕にはおりました。賢く、気高く、美しい人でございました。永遠の愛を誓ったりなどということはしておりませんが、僕が手放すことはあっても、向こうから離れて行くことは一切有り得ぬと、思い込んでいたのです。しかし、それは全く僕の勘違いでありました。その人は、いとも簡単に離れて行きました。別れの言葉を申す暇もございませんでした。まさにあっという間、と言うべきか、何の未練も無いように見えました。そしてあの日以来、その人、先生の消息は未だ掴めていないのです。

正午過ぎ、僕は大学を抜け出しました。午後の講義を放棄したというのではありません。先生を、探しに行くのです。先生は、この時間帯をたいそう気に入っておられました。太陽が真上に来る頃、外に出て日の眩しさに顔をしかめるのが日課である、と。けれどもこれも、今となっては昔の話にございます。懐古の念に駆られても、共に懐かしいんでくださる先生はもういないのです。いつまでも共に、と思っていたのは僕だけであったのでしょうか。先生、答えて下さい、先生。



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20110917



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