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自分で自分の目を潰した。そう言うと聞く人は不快そうに顔を歪めるだろうが、そこまでしてまでもわたしは戦に出たくなかった。女忍として戦場に名を馳せることに、何の意味も見出だせなかったのだ。戦なんて早く無くなれば良い。クナイを磨きながらそんなことばかり考えていた。早く、こんなものが必要ない世の中になれば良い。

「忍失格だね」
「本当ですよねえ」
「俺様の一番弟子とは思えないな」
「ええ全く。一番弟子なった覚えは全然ありませんけど」

幸村様にでも差し上げるのだろうか、団子を作りながらハァと深いため息をはいた長が近づいてくる気配がする。始末されるんだろうな。直感で悟った。何せ戦えない上に、軍の情報をたんまり持っている忍なんて用無しどころか厄介者でしかない。短い人生だった。

「長」
「俺様はもう君にとって長でも何でもないよ」
「潔くお願いします。出来るだけ痛くないやつ」
「もちろん」

首に冷たいものが宛てがわれた。刀かな。やっぱり目が見えないと不便だ。いくよ、と慣れ親しんだ長の声。いよいよわたしはこれから死ぬのだ。

「わたし、死ぬのって初めてなんです。ちょっとどきどきしちゃう」
「うん」
「初めてが長でよかった」

長にしては刀が大きく振り上げられ、わたしの命を絶った。さよなら、わたし。現世に未練なんてないし、遺した家族もいない。だから、現世に執着なんてない、けれど、
やっぱり最後に一目でも良い。長の姿が、見たかった。



20110815 おはようナーバス



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