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※祓魔塾の皆さんとちょっと仲たがいしていたときの京都行きの電車内でのあの話


車両と車両の繋ぎ目、電車内では最も不安定な場所にわたしは小一時間立っていた。ガタンゴトンという電車の振動に合わせて体も揺れる。これ下手したら酔うんじゃなかろうか。車酔い体質じゃなくて良かったありがとうわたしのDNA。ありがとうわたしを構成するものすべて。
ずいぶん長いこと立っていたからだろう、いよいよ足も辛くなってきた。よし、行くか。両の拳を握りしめ、唇を噛む。精神統一のために一度般若心経を唱える。大丈夫、いける。わたしはいける。わたしはやれる。

みんながいる号車の引き戸をあける。ああやっちゃった。もう引き返せない。やっぱりもうちょっと落ち着かせてから来るんだったばかやろうわたし。肥えだめに顔突っ込んで死ねわたし。

「ここおいでやー」

志摩が、人懐っこい笑顔で自分たちの通路を挟んで隣を指差す。すまん、と左手を上げて

「お隣り失礼」
「…え?」
「いやあ昨日夜通し鯖の味噌煮食べてたら今ものすごく吐きたくてさ、燐の顔面に撒き散らしちゃったらごめんね。でも燐なら自然治癒力的なものがほかの人より強いから大丈夫だよね安心安心」

寝る前に何度も暗唱したセリフを告げた。よく考えたら流暢すぎて逆に違和感があるかもしれない。しかもこれだとまるで鯖の味噌煮が悪いみたいだ。しまった。ああばかだ。もうほんと肥えだめに顔突っ込んで死んでよわたし。



盲目少女のうらはら


20110704



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