邂逅 | ナノ

わたしは一人で帰る通学路が好きで、まさかこんな無人島でたった二人きりになったとしても絶対に仲良くなれない相手と一緒に帰るのは全然好きじゃない。じゃあ何で送れなんて我が儘を言ったのかと言えばまあ所謂気まぐれってやつだ。そういうときってあるじゃん。でもちょっとこれは、土方に迷惑をかけてしまったかもしれない。いくら無人島で二人っきりでも絶対に相容れないというかマジで世界一死んで欲しい相手とはいえ、人様に迷惑をかけてはいけないと小さい頃からすりすりすりすり体にすり込まれてきたのに、なんたる不覚!

「土方」
「何だよ」
「すまんかった。無茶なお願いして」
「お前謝るとかウーパールーパーレベルで気色悪りいわ」

ぱしこん、と頭をはたかれる。しかも結構な強さ。この野郎首吹っ飛んだらどう落とし前つけてくれる気だ。

「でもウーパールーパーは結構可愛いと思う。少なくとも土方よりはな」
「…ほーお前付き合ってやってる相手に良くそんな口が利けんな」
「その点は全面的に謝罪する」
「明日の委員会来たら許してやる」
「えー…じゃあ、まあ、行くわ」
「何がえー、だ。本当は来るのが普通なんだよ委員会ってのは」

また頭をはたかれそうな気配がしたので道端で思くそしゃがんで土方の右手を避けた。見よこの神回避。これはもう歴史に残るレベルの回避シーンだと思う。その証拠に、怒りの沸点の低い土方の顔がどんどんキレモードになっていく。たぶんこいつはカルシウウムが圧倒的に足りていないな。成人男性の一億万分の一くらいしか摂取してない、断言できる。

「土方さ、うちでカルシウム摂取して行きなよ」
「はあ?」
「うち今日カレーだから、土方が人の三十倍の食欲の持ち主とかじゃなきゃ余裕で余るし。土方が良かったらだけど」
「…さてはお前なんかの薬物でも仕込んだな」
「違うわ。あんまりにも土方がキレやすいからのカルシウム摂取計画じゃん」

そして実のところ自宅には母が作りすぎたカレーがでっかい鍋にたっぷりと入っているのだ。じゃがいもの特売でじゃがいも買い占めるんじゃなかった。ここ数日はカレーか肉じゃがか粉ふきいもというじゃがいもづくしの食生活だ。早く食べきらないと頭おかしくなるわ。おかしくなりすぎて土方に今以上に辛辣な言葉を吐いてしまいそうだ、まあ別にそれはそれで良いんだけども。

「でも。お前んちの親御さんとか、いや、つかそもそもお前が俺を招待ってのが怪しいし」
「いやーうちもう全然問題ないよ。土方が来て、いもを消費いやカレー食べてくれれば、カレー食べてうちのいも消費してくれれば。いもをね、なんとか。いもを」
「いもいもうるせえな」
「お願いだからうち来てカルシウム、いや、いも食べてってよ」
「なんだよそれ、いも食べてけってどんなセリフだ」

いも食べてけなんて言えるの土方しかいないの!と棒読みで言えばまあだろうなそんな嫌がらせ、と冷めきった目で返された。なんか腹立つ。カレーに毒物入れるぞ。

「あとちょっとでうちだからまあそれまでちょっっと付き合ってよ」
「お前んちに着いても付き合うんだろうが」
「あ、そうだったわ」

じゃがいもの消失と引き替えに明日は委員会に行く羽目になったけどまああの量のじゃがいもがなくなるんなら良いだろうと思う。それにしてもわたしは両親に土方をなんて紹介しよう。あなたの娘の宿敵です、いやおかしいわ。あなたの娘のライバルです、いやねえわ。普通に行けばいいのか、普通に、じゃあ、クラスメイトです…これだ!



さそう

20120228


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