邂逅 | ナノ

好きなタイプは?と聞かれたら、「とりあえず苗字が土方とかじゃない人かな」と答えることにしている。
わたしたちの年代の女の子たちは、とにかくその手の話が大好きだ。でも、彼女たちはわたしの答えを聞くと、みんな一様にちょっと意味がわからないというような顔をする。わたしとしては至極的確な好きなタイプなのに。世の女の子はわからぬ。

「繭子、土方君が呼んでる」
「おっと失礼そういえば両親が危篤だった」
「委員会じゃない?繭子風紀委員じゃん」
「いやあ危篤ってやばいよねぇもうわたしびっくりしちゃってさあむしろわたしが危篤なっちゃうかと思ったみたいなそんな感じだわほんと危篤こわい」
「なんかすごいこっち見てるけど」

ぱねえスーパースルースキルをお持ちの友人に言われちらっと教室の戸を見ると、わたしの好きなタイプとは全く正反対の某土方君がイライラモードで佇んでいた。なんなんあいつなんなん。こっちガン見とかなんなん。

「何のご用でしょうかゴミムあっ土方君」
「何だよ今のわざとらしさ全開の呼び間違いは」
「いや全然なんでもないよくそやろあっ土方君」
「ちょっとお前マジで一回召されてくんない?天かどっかに。こちとらお前とくだらねえ話してる暇はねえんだよ」

委員会あんだろうが、今日、と酸素どろぼあっ土方君は言った。土方君のくせに倒置法の使用なんて忌ま忌ましい。何を強調する気だ。

「委員会ならちゃんと行きますえ」
「つって昨日来なかったのはどこのどいつだよ」
「わたしは東ドイツのが好きかな」
「今日はお前いねえと困るんだよ、来い」

重要な取り決めがどうたらこうたら言ってるが、正直わたしは帰りたい。帰って撮りためてたNHK高校講座を観たい。だいたい風紀委員会なんて激しくめんどくせー香りがプンプンする委員会、入りたくて入ったわけじゃない。名前だけ!名前だけだから!と先生から頭下げられてしぶしぶしぶしぶしぶしぶしぶしぶなっただけだ。それなのにまさかこんなガッツリ委員会させられるとは。契約違反も甚だしい。

「なんだかんだでお前仕事できるし、近藤さんが連れてこいってうるせえし」
「ああ近藤君はついにお妙とわたしの区別もつかなくなったのか。ジーザス」
「ちげーよ!馬鹿か!」
「頭に響くから声を荒げないでくれますかね土方君や。ということであばよ」

右手をあげ、机の横にかけられていたリュックサックを光の速さで引っつかみダッシュした。でも別れの挨拶は忘れないところがわたしだ。さすがすぎる。世界中の人はわたしを見習えば良いと思う、特に土方君。



にげる


20110703


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