昼休み、借りていた空き教室へと急いだ。大地と練習メニューについて話し合っていたため横断幕の作成に遅れていた。やばいやばい、俺が最上級生なのに遅刻なんて後輩たちに示しがつかない。まあ苗字が先に行ってくれてるとはいえ、俺も急がなきゃ…。そう思っていると、教室につく手前で山口に会った。



「あれ、どうした山口こんなところで」

「あ、菅原さん。ツッキーの手伝いしようと思って、俺も四組なんですよ」

「そうか、ありがたいな。行こう」



山口をつれて教室の前に行くと、中から楽しそうな笑い声が聞こえた。俺にはわかる、苗字の笑い声。よかった、楽しそうにやってるな、と安心しながらドアを開く。しかし、そこにあった意外な光景に少し動きを止めてしまった。そこには、予想していた通り苗字がいた。しかし横断幕を挟んでその向かいにいるのは月島だった。それも、他には誰もいなかった。



「あ、スガ!遅かったね」

「あれ…他のみんなは」

「宮田さんはレギュラー決めの何かで来られないらしくて、森重さんは遅刻です。で、笹谷はそもそも学校に来てません」

「ごめん、うちの後輩が遅刻で…」

「はあ…真面目に来た方が馬鹿らしい…」



野球部の二年生である宮田は部活の都合上で来れずテニス部の森重が遅刻、月島と同じクラスでバスケ部の笹谷は欠席、か。それで月島が真面目に来たのが意外だ。「わかった、悪いね遅くなって。やろうやろう」と俺はすぐに横断幕の作成に加わった。



「ツッキー手伝いに来たよ」

「別にいいって言ったじゃん…」

「月島くんのお友達?」

「はい、俺もバレー部で菅原さんの後輩の山口忠です」

「そうなんだ!私はスガと同じクラスの苗字名前。よろしくね」

「よろしくっす」


社交的な性格の苗字と山口は合うようだった。なんだか微笑ましい。そして黙々と横断幕に張り付ける文字の布を切っている月島をちらと盗み見た。さっき、月島は苗字と何を話していたんだろう。あんなに苗字が楽しそうに笑っていた。そんな楽しい話が、二人でできるのか…。俺はなんだか複雑な気持ちになりながらも、苗字が楽しいならそれでいいと納得して作業を続けた。



「すみません、遅くなって…!」

「こら奈々子!みんな来てるのに遅刻はだめでしょ」

「すみません、名前さん…」



ドアが勢いよく開いて森重が入ってきた。苗字が先輩の顔を見せている。そうか、俺が後輩を抱えて部活をしているように、苗字も同じように、こうして指導とかもしているんだな…。すると、彼女がこちらを向いて口を尖らせた。



「何、スガ…おかしそうな顔して」

「ち、違うって。ただ苗字も先輩なんだなって」

「当たり前だよ!もう…」

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