呪いでも因縁でもいい


倉持が好き。そう思ったら、急にもっともっと倉持が好きになった。なんだか目を合わせるのが恥ずかしくなったりして、自分でも戸惑った。彼のことはもう長いこと知っていて、恋とは出会った時から始まると(一目惚れとか、この人いいなと直感で思ったりとか)そんな具合に考えていた私には、倉持を好きになるのはかなりの誤算だった。何を計算していたわけでもないんだけど。



中学で悪さばかりしていたけど野球だけはピカイチに上手だった倉持とは中学一年生の時からなぜか縁があってか三年間同じクラスだった。私はどちらかというと真面目に学校生活を送っていた方だったから、倉持の悪さをいつも遠目に見て呆れていた。よくもまああんなに暴れて、何度先生たちに叱られても懲りないなあって。その倉持がせっかくもらった推薦を取り消しにされたんだから私は他人事のように「あ、倉持おわったな」なんて思っていた。よく俺の家は私立に俺を通わせるほど金はないと言っていたし、もしかして中卒になってしまうんじゃ、と私は他人事なりにも少しは心配していたのだ。私は学校の成績がよかったからさっさと青道高校の推薦をもらって皆が受験に向けて必死に勉強しているのを余裕を持って眺めていることができていたのだが、そんなある日倉持が私の前に仁王立ちして言った。



「高校行ってもよろしくな」

「え、なに言ってんの」

「何って、春から同じ高校だからよ」



衝撃だった。まず、どうやって入学を手に入れたのかから質問攻めにした。「そんなに慌てるなよ」と倉持は大声で笑っていたが、私には到底笑える話ではなかった。学校一の問題児が同じ高校だなんて、私は高校生活をまた問題児とともに送らなければならないのかと思って気が重かった。話によれば倉持の入学は試験でも推薦でもなく「スカウト」だった。青道が野球が強いのは知っていたから、倉持がそんなすごい学校に「スカウト」されただなんて、倉持って実はすごいんじゃと感心した。スカウトという言葉はあまりにも自分のいる環境からはかけ離れた言葉だったため、何度聞いても違和感があった。その「スカウト」がこのどうしようもない馬鹿の倉持を救ったんだから、人生何が起きるかわからない。(私の人生じゃないけれど。)そんなわけで私と倉持は青道高校に進学して、ここでもまた縁があって今までの高校の二年まで同じクラスだ。何か私には呪いがかけられているのでは、と思ったこともあったが、その呪いとやらにも今では感謝している。



「あ、美味そうじゃん。いただきー」



私のスナック菓子の袋に腕が伸びる。私は顔をあげてそいつをキッと睨みつけた。彼の名前は御幸一也。野球部のキャッチャーで早くも一年から大活躍している大物らしい。倉持から散々聞いているために彼のことはよく知っているが、それよりもなぜか私はこいつと一緒にいる時間が長い。なぜか、私が好きで付き合いの長い倉持よりも。

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