太陽に向いて咲く | ナノ
渦巻くとおせんぼ


いつからだろう。自分でもよくわからないのだけど、私はある男の子に付きまとわれていた。たぶん一年生の秋くらいからだった気がする。彼の名前が内田タケシ(下の名前の漢字は知らない)というのは、付きまとわれていると自覚してから数ヶ月経ってからだった。それが、最近めっきりなくなったと思っていたら、つい先日部活のランニング中に腕を掴まれ引き止められた。



「で、倉持くんが助けてくれたって?」

「そう」

「へーえ、あの倉持くんがね。ワルそうに見えるけど意外と正義感強かったりするの?」

「うん、そんな気がする。わかんないけど」

「あれ、あんた御幸くんにも助けられてなかったっけ?違った?」

「あ、そう、それもある」

「なんかあの二人と縁があるみたいね」



同じ部活の愛ちゃんがお弁当のウィンナーを口に放り込みながら言った。確かに愛ちゃんの言うとおりだ。あんなに関わりのなかった野球部の二人と、最近はなんだか接点が多い。エントリー表奪還を助けてくれた御幸くん、ストーカー内田くんを追い払ってくれた倉持くん。あの二人はやっぱり見た目によらずいい人たちのようだ。



「ねえ、なんか騒がしくない?」



愛ちゃんに言われて教室の外を見ると、確かに人が多かった。ざわついていたし、何かあったのかな、と考えていると、廊下を血相を変えた川上くんが走っていった。彼も野球部だけど私からしたら親しみやすくて、去年同じクラスだったからそこそこ仲がいいのだ。その後ろを前園くんが走っていた。前園くんも野球部で、何度か話したことがある。野球部たちが駆けつけているのを見て、もしかして野球部が問題を?なんて考えが頭を過ぎった。が、いやまさかね、とそんな考えはすぐに消えた。




***




「倉持!」



ゾノの声が響いた。見れば倉持が御幸と知らない男子生徒に押さえられていて、彼らの前には華奢で色白な男子生徒が尻餅をついたような格好で座っていた。ゾノから事情を聞いた俺はすぐに現場に走った。何が起きたか、いや、起きそうだったかは、想像できた。



「お前、甲子園行く気ないのか」



御幸が低い声で言った。こそこそと何かを話す女子生徒たちが俺の横をすり抜ける。倉持は歯を食いしばった状態で俯いたまま何も言わなかった。床に座っていた男子生徒は周りに人だかりができていて我に返ったのか、立ち上がって一目散に逃げ出した。誰も彼を追わなかった。ゾノが息を荒くする。



「青道が…俺らが甲子園に行けんかったらどうするつもりや!」

「…わりぃ」



倉持はそれしか言わなかった。御幸と男子生徒が彼を放すと、そのまま倉持は教室とは逆の方向の階段へと歩き始めてしまった。


 
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