太陽に向いて咲く | ナノ
わたしのなまえ?


「ありがとよ、昨日は」



突然話しかけられて驚いて振り返るとその声の主が倉持くんで、私はさらに驚いて手に持っていた教科書やらノートやら一式全てを落としそうになった。あの倉持くんに話しかけられている、それも今回は雑用を押し付けられるわけではなさそうだ。(むしろお礼を言われているのだから。)



「ぜ、ぜんぜん平気です!」

「なんで敬語?」

「なんでだろう」

「ヒャハハ!変なやつ。それよかお前大丈夫だったか、部活。間に合ったか」

「あ、うん大丈夫だよ」

「そか。そりゃあ良かったわ」



倉持くんって意外と優しい…って何それ!あなた、私が犠牲になるかもしれないとわかった上で!と一人で心の中で唸ったが、当然口にできるわけがないので押し黙った。倉持くんが怪訝そうな目で見てくる。



「お前も二年でレギュラーだもんな。大変だよな」

「倉持くんもでしょ、すごいよ」

「だからお前もだろって」

「バレー部と野球部じゃ強さも規模も違うもん…本当にすごいよ、倉持くん」



自分でも驚くほどスラスラと言葉が出てきた。あれ、ついこの間まで、別世界に住む人だったのにな。ただ、倉持くんは見た目以上に親しみやすい雰囲気の人なのだなという印象を受けて、自然と彼と会話できているのだった。目つきだって怖いけど、笑うとこんなに無邪気。私の「本当にすごいよ」の言葉が嬉しかったのか、ニカッと笑った彼がまぶしくて、なんだか可愛いと思ってしまった。



「ありがとよ。じゃあまたな、苗字」



ひらひらと手を振る倉持くんの背中を見送って、あの倉持くんと会話した!と驚きつつも嬉しかった。自然と歌が口から零れる。しかし、ふとある事に気がついて私は動きを止めた。最後に彼、苗字って私の名前を。それに「お前もレギュラーで大変だな」って…あれ?


 
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