太陽に向いて咲く | ナノ
どうにもこうにも


部活はバレーボール部、うちの高校のバレー部は都大会で四回戦進出が平均した成績の、まあ弱からず、かなり強からずといった感じのチームだ。ずっと小学校の高学年からバレーをやっている私は常にスタメンだったが、だからこそ練習を怠ったことはなかった。だからその日も私は帰り支度を済ませ、すぐにでも部活に向かおうとしていたのだ。なのに、



「お前、ちょっと時間あるか」



頭上から降ってきた声に顔を上げると、そこには今年度が始まってから一度も話すこともなく、密かに観察していた同じクラスの倉持くんが立っていた。思わず目を見開く。どうにも驚いて返事ができなかった。答えは「ないです」が正しかった、先輩の引退が近い中で、二年生でありながらレギュラーの私は人一倍練習しなければならなかった。だから一刻も早く部活に行きたいのに、目の前に突然、もはやテレビの中の芸能人のように見ていた倉持くんが現れてしかも話しかけられては、驚いて何もできない。



「名前ー何してるの早く行くよー」



教室の後ろのドアから同じ部の友だちが呼んでいる。そうだ、行かなきゃ、でも倉持くんに話しかけられてるし、身体が動かな、い…。口をパクパクさせていると、倉持くんは待ちきれないといった感じで私に何かを押し付けてきた。驚きつつも慌ててそれを両手で受け止めると、それは学級日誌だった。目を白黒させるしかない。



「悪い、俺ソッコーで部活行かないと殺されるから、それ職員室に頼むわ」



倉持くんはそれだけ言ってまともに目も合わさずに教室を飛び出して行った。取り残された私は唖然とした。え、わたし雑用を頼まれたの?周りを見渡せばクラスメートはまばらに残っているし、なんで私に?それも、話したことも、おそらく名前さえ知らない私に。頼みやすかったのかな、と複雑な気持ちになりながら私は彼と同様に教室を飛び出した。


 
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