太陽に向いて咲く | ナノ
あまりに柔らかい


「今日の日直は…苗字と倉持だな。悪いが今日はゴミの量が多い上にゴミ捨て場の大掃除もあるからよろしくな」



担任の先生が淡々と言った。思わずえっと声が出る。黒板を見れば確かに日直の欄に私と倉持くんの名前が書いてあった。なんて運が悪いんだろう。こんな仕事がたくさんある日に限って日直なんて。少し席の離れた愛ちゃんが無音で「代わろうか?」と聞いてきた。ううん、と首を振る。愛ちゃんは私がレギュラーなのを気にしてそう言ってくれたのだろう。でも、倉持くんも練習があるのに日直をやるのだから、私だってちゃんとやらなきゃ、と思う。



「あちゃー今日はミーティングもあるのに。まあ、日直の仕事じゃしょうがないか」

「えっ倉持くん大丈夫なの?」

「まあ大丈夫だろ。監督だってそこんとこはわかってるだろうし」



御幸くんがへらへらと笑った。やっぱり、倉持くんも大変なんだなあ。私も頑張らなきゃ、と思って私は意気込んだ。早く終わらせよう、私のためにも、倉持くんのためにも。




***




ゴミが多いと聞いていたが、想像以上に多かった。なのに倉持くんは「俺が持つ」の一点張りで私はほとんど持たせてもらえなかった。倉持くんが両手いっぱいに袋を持って、私は燃えないゴミのふわふわと軽い袋を一つだけ持っていた。さすがの倉持くんも肩をいからせて大変そうなのでさすがに私も「大丈夫?持つよ」と言うけど、倉持くんは頑なに首を振った。



「俺ら、本当についてねーな」

「ね…どうしてこんな大変な日に…」

「まあ早く終わらせよーぜ」

「そうだね」



ゴミ捨て場の掃き掃除をしている隣のクラスの日直の二人をよそに私たちは掃除用具入れの整理を始めた。もう長く使っていないであろうホウキなどが散乱に思わず咳き込んだ。背伸びをして上の棚を掃除しようと思ったら、力を入れた拍子に上から大量の埃が降ってきた。驚いて目をぎゅっと閉じて、ついでに尻餅までついてしまった。



「わっ!」

「おい、大丈夫かよ!」

「もー…最悪…」



髪や顔に埃が付いているのは目を閉じていてもわかった。言葉通り、最悪だった。部活になかなか行けない上に頭から埃をかぶるなんて、ついてないにも程がある。ところが、すぐに頭が動かなくなった。温かいものが私のまぶたに触れて、それは続いて頬にも触れた。指、だ。倉持くんの。そう気づくのに時間はかからなくて、彼が埃を払ってくれた目を開くと、倉持くんの顔がびっくりするくらい近くにあった。一瞬二人の視線が絡み合って互いに動きを止めたが、倉持くんはまた私の顔についた埃を払った。おでこも、頬も、口元も。想像もできないほど、彼の指先の動きは柔らかかった。何も言えずに彼にされるがままにされている。そして、また倉持くんが指を顔に添えたまま動きを止めて、今度は彼の顔が近づいてきた。え、もしかしてこれ、キスする……



「そこの掃除終わった?」



急に背後から声がして見れば隣のクラスの日直の男の子がいた。二人ともびくりと身体を揺らしたが、倉持くんは立ち上がった拍子にホウキが倒れてきて彼の背中に思いっきり当たった。「いってぇ!」と倉持くんが叫ぶ。「ごめんなさい、まだ」と答える私も、痛そうに背中をさすっている倉持くんも気まずそうに下を向いた。


 
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