今年は桜の開花がだいぶ遅れ、4月に入って1週間が経った頃咲き始めた。日向とリコは始業式が終わった後、桜の木の下で思い出に浸っていた。だいぶ温かくなった4月。ひらひらとなびくスカートを軽く押さえて、リコは桜の木を見上げた。

「髪、だいぶ伸びたな」
「そうねえ。でも、そろそろ切ろうかな」

くるくると髪をいじりながらリコは言った。日向はリコの髪を触りながら勿体無いと言う。リコは小さく微笑みながら、長い方が好きなの?と聞いた。日向は少し困ったような顔をした。

「いや、そうじゃないけど」
「じゃあ、切ってもいいじゃない」
「まあ、髪短くても長くてもカントク可愛いし」

めったに聞かない言葉にリコは思わず吹き出す。熱でもあるのかと思い額に手を当てるが、熱があるわけではない。じゃあ拾い食いでもしたのかと聞けばそうでもない。日向はリコの慌てようを見て笑う。俺が可愛いって言ったら変なのかと聞けばリコはうんと思いきり頷く。日向はため息をつき言った。

「いつも可愛いと思ってるけど、口に出してないだけだって」
「…日向君、いつもそう思ってくれてるの?」
「ああ。人一倍頑張ってるカントクも、怒ってるカントクも、オレは好きだ」

可愛いと思ってくれていることに感動していたリコだが、日向の最後の言葉に驚く。好きとはどういう意味なのかと少し考えてしまったリコが日向の方を見ると真剣な表情でリコを見つめていた。その瞳にリコは捕らえられた。目が離せない。頬を赤く染めたリコを見て日向は頬を緩ませた。

「さて、と。そろそろ行くか、カントク?」
「…う、ん!」

もうそのときにはいつもの日向に戻っていた。リコは胸のどきどきがまだなお納まらなかった。胸を優しく押さえ、深呼吸をして少し落ち着いてからリコは走り出した。


熱視線からは逃れられない


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