部室の電気がまだついている…。誰かいるのか?そう思って覗いてみれば、ベンチで気持ちよさそうに寝ているカントクがいる。

「カントク、寝てるんスか?」
「んー…」

…正直それは反則だ。誘っているのかと勘違いするほどの格好。少しはだけたシャツからちらりと見え隠れする白い肌、ミニスカートからはすらりと綺麗な足が出ている。無防備、なんだよな…。しかもこの甘えたような声、何だよ。可愛すぎるっての。オレの少ない理性を奪うのは簡単なぐらい。

「無防備なんだよ、カントク…」

試合中のカントクは女とは思えないほど勇ましくて、かなり男前。下手すれば、男であるオレたちよりも男前かもしれない。でもそれ以外のときに見せる表情や仕草は、女。例えば、今だと寝顔だとか、甘えた声。普段のカントクからは想像もつかない、だがそれがいいと思ったり…。変に着飾ってる女とかバッチリ化粧をしてくる女なんかよりカントクのほうがよっぽど好きだ。というよりカントクが好きだ。今まで恋とか興味なくて、バスケを何よりも優先してきたオレにとっては邪魔でしかなかった。けど、カントクに会ってから恋を知った。カントクの言動一つ一つに、嬉しくなったり辛くなったり…色々体験した。

恋をするって、大変なことなんだと気づかされた。

「んー…火神、君?」

…っ。髪を触ろうとしたオレの手は驚きのあまり一歩手前で停止する。まだ寝ぼけている様子のカントクは、ポーッとした瞳で見つめてきてそれから笑った。おはよう、火神くん。そう言いながら。今の…可愛すぎだろっ。反則。不意打ちすぎ、まじでカントクには敵わねぇ…。一瞬で、オレの少ない理性を奪っていった。

「私、いつの間に寝ちゃったのかしら。火神君は忘れ物?」
「…カントク。オレ、カントクのこと好きだ。…です」
「ありがとう。私も火神君好きよ」
「……」

思わず告ってみたけど、返ってきたこたえは想像通り。俺とカントクの『好き』の意味はかなりずれているらしい。残念なことに。結構ショックだけど、まあ、まだ振られたわけじゃない。オレのものにするまで諦めない。

「カントク、覚悟しててくれ。…ですよ」
「う、ん?よく分からないけど、覚悟しとく」


すれ違う『好き』の意味
(今は違うとしても、いつかは同じにしてやるよ)


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