▽高尾視点

最初は女子高生でカントクという立場の相田リコに興味を持った。そして次に女の子の相田リコに興味を持った。カントクさんはどんな顔して笑うんだろうとか、どういう恋をするんだろうとか、気づけばカントクさんのことばっか考えている。気持ち悪いかも、オレ。
でも、どうしてかオレの頭の中からカントクさんは出て行ってくれない。寧ろ思いは強くなるばかりだ。相当重症なのかもしれない、真ちゃんに知られたらきっと笑われるんだろうな。

***

「高尾君、こんにちは」

元気に挨拶をしてくれたカントクさんにオレはすぐに返事ができなかった。それはカントクさんが現れた場所が、本来カントクさんがいるはずのない普段オレたちが使っている体育館だからだ。
カントクさんはオレに挨拶を済ませたあと、オレたちの監督と一言二言話したあと、朝から用意されていた椅子に腰を下ろして練習を眺め始めた。全く状況把握ができないんだけど、どうなってんの?

「話を聞いていなかったのだろう、高尾」
「真ちゃん、なんで誠凛のカントクさんがここにいんの?」
「監督の話はしっかりと聞いておくのだよ、馬鹿め」

呆れたようにため息をつきながらも真ちゃんは朝の監督の話を事細かに話してくれた。どうやら今日は一日オレたちをサポートしてくれるらしい。カントクさんが持つ特別な目でオレたちの弱点と強味になるもの見つけてアドバイスしてくれるんだと。カントクさんがこんなに近くでオレのことを見てくれるんだって思うとすげえやる気になるし、疲れも感じないけど、他の部員もその瞳に映すんだと思うとモヤモヤした気持ちになる。
カントクさんはオレのものでも、誰のものでもないのはわかっている。でもオレだけを見ていて欲しいって思う。

「結構ワガママなんだなーオレ」
「高尾君、はいどうぞ」
「うおっ!」
「えっ、なに?!」

今のつぶやきを聞かれたかどうかなんてどうでもよかった。それよりいつの間に近くにいたカントクさんに驚いた。思わず変な声を出してしまったせいでカントクさんまで驚かせてしまったことを後悔する。カントクさんはオレを不思議そうに見つめて「大丈夫?」なんて心配をしてくれた。優しくて、思わず胸がときめきそうになる。
いや、実際ときめいちゃったんだけど。

カントクさんの手にドリンクとタオルが握られているのを見ると、どうやらマネージャーとしての仕事も行っているらしい。すごい仕事量だと改めて感心する。

「あ、用意してくれたんすね」
「ええ、誠凛でもカントク兼マネージャーですから。はいどうぞ!」
「どーも、…っ」

笑顔でお礼を言ってタオルとドリンクを受け取ろうと伸ばした手は、目的のものとは別のものに触れて行き場を失った。やわらかくてさらさらとした感触、明らかにタオルでもドリンクでもなくて。わざと触ったわけではなく、たまたまあたってしまっただけで。当たったといってもほんの少しだし照れるほどじゃない。それなのに、オレの頬は信じられないほど熱くなって、胸の動悸も激しくなる。

「え、あ、の」

カントクさんを見ればオレにつられたように頬を赤くしておどおどしていた。その姿また可愛らしくて、オレの動悸をさらに激しくした。


この胸の動機が恋してる証拠

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2013年《リコ生誕企画》
しらたきさんへ


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