▽大学生

「相田ーちょっとこっち来い」
「はい、どうしたんですか?」

ソファに座ってくつろいでいた宮地に呼ばれたリコは料理中の手を止め、濡れていた手をタオルで綺麗に拭き取ったあとパタパタとスリッパを鳴らしながら宮地の下に小走りで近づく。すると宮地は近づいてきたリコの腰に手を伸ばしそのまま自分の方に引き寄せた。リコのお胸の下あたりに顔をすり寄せ甘える宮地はまるで子供のようだ。

(子供にしては大きすぎるんだけどね)

そんなことを思いながら一人くすくすと笑うリコに、宮地は顔をリコの胸下に埋めたまま「何笑ってんの」と口にするがリコはただ笑うだけ。そんなリコを不思議に思う宮地だがリコの抱き心地の良さを味わう方が大事だと思ったのか特に追求することなくそのまま口を閉ざした。
珍しく甘えたな宮地が可愛く見えてきたリコは宮地の頭を優しく撫でたあと、ぎゅうと頭を優しく包み込むように抱きしめると宮地の苦しそうなうめき声が聞こえた。

「ちょ、相田…くる、しい」
「あ、ごめんなさい!その、」

「宮地さんがあまりに可愛かったので」という続きの言葉は宮地の不意打ちのキスで紡ぐことはできなかった。

「お前可愛すぎんだよばか」

耳元で聞こえる宮地の声。囁くような優しい響きにリコの耳はじんじんと熱を帯びていく。あっという間に赤く染まったりんごのような耳に宮地はカプリと噛み付く。突然の出来事にリコは驚きを隠せず、噛み付かれた方の耳を抑えて声にならない声を出している。あまりの動揺っぷりに宮地は思い切り吹き出す。

「そんな笑わないでください!」
「悪い悪い、相田の反応が可愛すぎるもんだから」

つい苛めたくなんだよな、なんて楽しそうに笑う宮地。その笑顔一つで許してしまいそうになるリコはきっと自分で想像している以上に宮地が時々起こすアクションを嫌だと思っていないのだろう。現に今も驚いただけで嫌がってはいない。
そしてこれに気づいているのは宮地だけであって、当の本人は気づいていない。その鈍感さがまたリコの魅力の一つだと宮地は思っている。

「とりあえずさ相田ここ座れ、料理はあとで一緒に作ればいいから」
「でも…冷めちゃいますよ?」
「いいって。温め直せばいいんだし」
「…それなら失礼します」

宮地の言う『ここ』とはつまり宮地の膝の間のことで。リコが赤面するのも無理はないだろう。一度は断ったリコだが宮地の多少の強引な言葉によって最終的には折れた。
ゆっくりと宮地の膝の小さなスペースに腰を下ろして宮地に背を預ける。すると項にくすぐったさを感じた。

「相田すげえいい匂いすんのな」
「もう…っ!」

すんすんと匂いを嗅ぐ音と共に聞こえた宮地の発言に思わず出てしまった「変態」というつぶやき。宮地にはばっちり聞こえてしまったようで、リコを見上げるとにやりといやらしい笑みを浮かべてリコをソファに押し倒した。どうやらリコの変態という言葉が宮地の中の何かのスイッチを押してしまったらしい。

「相田は今日のメインディッシュに決定な。拒否権なんてないから諦めろ」
「え、」
「…早速、唇から味わうとするか」

そう口にするや否やリコの唇に己の唇を重ねた宮地は、薄く開いているリコの唇の間に舌を忍び込ませてキスを楽しみ始めた。リコが小さく抵抗を示していた右手も今は宮地に押さえつけられて何の意味もない。完璧に逃げられない状況を作られたリコは諦めて宮地の望むことをしようと、己の舌を自ら捧げた。


メインデッシュは君に決定しました

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2013年《リコ生誕企画》
学生服さんへ


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