カラ、コロ、

元の大きさに比べてだいぶ小さくなった飴玉を紫原はあろうことかリコの口に口移しで与えた。ほぼ融けて小さくなった飴玉は程なくしてリコの口の中で無くなってしまった。しばらく放心状態だったリコが我に返ったのはその瞬間である。信じられない、といった様な瞳で紫原を見つめるリコ。まだ感触が残っているのか唇を指でなぞっている。

「何で、?」
「んー…相ちんの唇がおいしそうだったから?」
「だからって。飴まで必要ないんじゃないの」

赤い頬をおさえてリコはもごもごとそう口にする。紫原は少し考えている様子を見せたが、最後には首を傾げて逆に「何でだろ」と尋ねてきた。今したことは彼がしたことで、どうしてそんなことをしたのかなんて彼にしか分からないのだ。ましてやいまいち考えが読めない紫原となると、難問だろう。リコは無謀な挑戦はしたくないと、一つ小さくため息をついた。そんなリコを見て紫原は不思議そうにもう一度首を傾げて、それから新しい飴玉を一つ袋から出した。のんきね、なんて小さく笑うリコに紫原は少し微笑みポケットに手を突っ込みそこから新しい飴玉を取り出した。かわいらしいパッケージに包まれた飴玉はミントレモン味。

「一番のお気に入り」

ただ一言それだけ言って紫原は歩き出す。リコは紫原の読めない行動に驚かされながらも慌ててその背中を追った。歩幅のせまいリコはついていくのに必死で、すれ違い様に人と肩にぶつかることなので気にしていなかった。紫原はその姿を見せさりげなく歩幅を狭くしてリコのスピードに合わせて歩き始めた。それに気づいたリコは紫原の小さなやさしさ、温もりを感じてニヤける頬をおさえる。何笑ってるの、と頭上から聞こえる声にもリコは答えられそうに無かった。


自由な恋でいいじゃない


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