暗闇に光る二つの赤と黄色の瞳。

「ぐっ、ぁ」

そして若い女の苦しみに喘ぐ声。人通りが少なくなってきたとはいえ、場所は住宅が建ち並ぶ住宅街。いつ誰が通るかも分からない道端で若い女は一人の男に首を絞められていた。若い女の首を骨ばった男の手がまるで吸い付くようにしてくっついている。ただ触れているだけなら殺意を感じられないが、その手には力が込められているため殺意しか感じられない。力を少し緩めたときに見えた首下には紅い痕が残っていた。

「もっ、何、なの、よ」
「相田さんうるさい。少し黙って」

更に強い力が加えられ表情を歪ませる若い女、相田リコ。そんな彼女を見て首を絞めていた男は満足そうに微笑んだ。ゆっくり静かに細まる瞳をリコは思い切りにらみつけたが、相手の男は口角を上げたまま表情を変えることはなかった。あろうことかさらに笑みを深くしたのだ。

「いいね、その目」
「嫌、い。大嫌いよ、キミなんかっ」
「うん、知ってる。相田さんがボクを嫌う以上に、ボクも相田さんが嫌い」

そうして赤司はもう一度口元を緩めた。完全に狂っている。リコは目の前の彼から逃れる術を持っていないことにそのときになってやっと気づいた。気づいた瞬間、恐怖がさらに増して手が震えてきた。手に、足に、体全体に力が入らない。頭が働かない。リコは目の前の赤司をただ睨む。赤司は表情一つ変えずに相変わらずリコの首に手をやっていた。
リコは顔を真上に向け漆黒の夜空に煌く小さな星たちを見て切なそうに笑う。

「星の数ほど人間はいるのに…」

小さくつぶやいて、それから「何でキミと出会っちゃったんだろうね」と付け足した。そのつぶやきに赤司も答えられずにただ小さく笑った。


これが運命というもの


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