▽原作捏造/紫原視点
泣かないで、泣かないで相ちん。
今まで一度も涙なんて見せなかった彼女が初めて見せた涙。一粒一粒がキラキラ光ってすごくキレイ、なんて不謹慎にも見とれてしまった。相ちん、と小さく呟くように呼べば相ちんは少し笑って、涙をまたこぼした。
年上の女の人が泣いているときどうすればいいかなんて、オレには分からない。だからとりあえず傍にいようと思って、傍にいた。けど相ちんの涙が止まるわけでもない。オレが傍にいてもいなくても同じじゃないか、って思ったけど相ちんは笑って「傍にいてくれるだけで心強いわよ」なんて言ってくれる。本当は苦しくてたまらないくせに。いつも無理して笑ったりして、相ちん馬鹿だよ。
「どうして、笑うの?泣いてもいいんだよ?」
今のオレにはそれしか言えなかった。相ちんの背負ってるもの全てを知っているわけではないから、せめて相ちんが泣いているときは傍にいたい。それくらいなら許してくれるよね?相ちんの心が欲しいなんてわがまま言わないから、だから、せめて傍にはいさせて。相ちんの悲しさを全て吸い取ってあげる。オレが相ちんの苦しみを食べてあげる。
「ねえ、相ちん。オレずっと傍にいるから」
「…うん、ありがとう紫原君」
相ちんは優しいからほらまたこうやって笑ってくれる。悲しみを、苦しみを隠して。オレよりもずっとずっと相ちんは強いから、もしかしたら一人でも大丈夫なのかもしれない。でも、オレがそばにいたいから。いるって決めたから。これからもずっと傍にいたいから。
もう少し、少しでいい。やさしいせかいになればいいと思った。
ふたりぶんだけやさしいせかいへ
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企画:わけもなくただ、好きさま提出
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