▽氷室視点

しりとりなんて、子供の遊びだと思ってた。けど目の前でニコニコと嬉しそうに笑う彼女は、子供というには少し大きすぎるわけで。

「しりとり!はい、次は『り』からですよ氷室さん」
「ああ、そうだね…」

何故しりとりが始まったのかも分からないが無邪気に笑う彼女を見たら、そんなことどうでもよくなってきて、しりとりに付き合ってあげようなんて考えてしまう。『り』から始まるものなんていくらでもあるから簡単に思いついてしまうが、それではつまらないから何か面白い言葉を捜してみる。
少し考えてから、オレはある一つの意地悪を思いついた。意地悪というよりも、サプライズみたいなものかもしれない。

「リコ、大好きだよ」

優しく口付けてそう囁けばリコは驚くほど顔を赤くして、オレの顔を見ていた。驚きのあまり口はポカンとあいていて、少し間抜けだ。まあそんな表情も可愛いんだけど。ニッコリ笑ってもう一度口を塞いでみたら頭に思い切りチョップを食らわされた。地味に痛い。

「い、今の反則ですよ…っ」
「だって、普通のしりとりじゃつまらないからさ」
「だからって…大好き、なんて、」

何て言葉にしたらいいのか分からないらしいリコは視線をかなりさ迷わせて、オレと目が合うと俯いてしまう。言葉も必死で口にしようとしているけど小さな声でもごもごしゃべっているから何を言っているのか分からない。
そんな姿のリコもやっぱり可愛くて、オレのせいで困っていると思うと何だかすごく嬉しくなる。可愛いからもう一度キス、なんて思ったら今度は完璧にリコに交わされた。駄目だよリコ、低い声でそう言葉にすればリコは大人しくオレの方を見つめる。

「うん、いい子だねリコ」
「…氷室さん嫌いです」
「オレには好きって聞こえるけど?」
「…やっぱり嫌いです」

そうは言うけどオレからすれば好きにしか聞こえない。リコの嫌いには甘い余韻がある。まるで好きと言われているかのような。だからオレはリコに嫌いと言われる度に好きと告白されているようで嬉しくなる。思わず頬を緩ませるとリコは不思議そうにオレを見つめる。オレは無防備になったその唇にそっと自分の唇を重ねた。


背中合わせの感情
(好きも嫌いも同じ存在)

−−−−−−−−−
かなり前にアンケートで頂いた『言葉遊びする氷リコ』です。


BACKNEXT


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -