長い付き合いである木吉が誕生日を迎えるため、プレゼントを部員全員からのプレゼントとは別にこっそりと用意していた。部活終了後みんなからのプレゼントを受け取った木吉は頬を緩ませて喜んでいた。リコもその木吉の喜びように小さく笑い、良かったわねと声をかけた。すると木吉は「今年はあれないのか?」などと不思議そうに首を傾げて聞いてくる。「あれって、何?」と今度はリコが首を傾げる。周りの部員たちも木吉の言う『あれ』とは何なのかと不思議そうに木吉に注目した。

「あれってあれだよ」
「だから、あれって何よ」

多少リコが苛立ちながら聞き返せば木吉はふはっと突然噴出す。噴出したかと思えば急に真剣な表情でリコを見つめてくる。

「分からないなら今年はオレからするよ」

何を、と聞く暇もなかった。気づいたときには木吉の唇はリコの頬に口付けをしていた。柔らかそうなリコの頬に木吉の唇がピッタリとくっついて、離れた。と思ったら今度は反対の頬に口付ける。放心状態のリコを気にする様子は見られない。その証拠に今度はリコの桃色の甘そうな唇にかぶりつこうとしている。流石にそれは駄目だと思ったのか、周りの部員たちは慌てて木吉とリコの間に割って入った。邪魔するなよと言いたげな木吉に日向は眼鏡を光らせて怒鳴る。

「お前何考えてんだ!カントクに何してくれちゃってんだよ!」
「いやさ、去年の誕生日にリコが『誕プレ用意してなかったから頬にキスで我慢して頂戴ね。あ、来年は唇にしてあげるわ…なーんてね。でも覚えてたら本当にしてあげてもいいわよ』って」
「…何つー約束してんだよ!」

木吉の話からすると木吉は約束通りの行動をしただけであって何も悪いことはしていない。日向は呆れたようにリコを見る。リコは完全に約束のことを思い出したのか、頬を赤く染めてうつむいていた。日向はその表情を見て何となく悔しくなった。

「カントクは、木吉とだけそんな約束したのか…へえ、ふーん、そう」
「ちょ、ちょっと日向君、」
「…去年はいなかったんで仕方ないですけど、今年はくれますか?カントクのキス」
「え、ええ?黒子君?」

話は徐々にずれていく。じりじりと部員たちはリコに迫ってくる。目がギラギラと光っており、まるで獣が捕食する生き物を見つけたようだった。リコがたまらずその場から逃げ出すのを見て、一斉に部員たちは走り出した。バタバタと近づいてくる足音に恐怖を感じながらも振り返ることなどできずに、リコは今自分が出せる最高のスピードで逃げ回った。だが現役バスケ部である彼らから逃げることなどできるはずもなかった。


約束なんて簡単にするもんじゃない

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き助さんリクエスト。
リクエストありがとうございました。


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