部活漬けの毎日を過ごすバスケ部員に少しでも体を休めてもらおうとリコは考えた。そこで考え出したのは、リコが父から伝授されたというマッサージを1日体験するというものだった。本当はリコの父が直々にマッサージをしてくれる、という話だったのだがどうしても都合がつかなかった為リコがマッサージをすることになったのだ。マッサージと聞いてリコと体を密着させている己を想像する男共の顔は緩みに緩みきっていた。

「早速だけど、1年生から順番にマッサージ始めるわよ。えーとじゃあ、火神君から練習抜けてこっち来てくれる?」
「う、す。分かった、…ます」
「火神君が終わったら、河原君、で黒子君。順番に呼ぶから来てね」

リコの言葉に部員全員が頷く。そして程なくしていつものように練習は始まった。しかし内心マッサージが気になり、練習どころではない。視線は体育館の隅でマッサージをするリコの方に向いている。極上のひと時を味わっている火神の顔は憎たらしいほど幸せそうであった。

「どう?火神君の体に合ったマッサージをしてるつもりなんだけど」
「す、っげ疲れ取れる、ます」
「本当?良かった。疲れ取れなくちゃマッサージの意味ないものね」

そう言って笑うリコに火神はバレないように小さく笑った。あまりにも無邪気に笑うリコを見て顔がニヤけたということがバレるなんて、恥ずかしいと思ったからだ。落ち着いて表情を元に戻そうと深呼吸をしようとしたとき、予想外の出来事が起きた。リコが火神の背中に馬乗りして、マッサージを始めたのだ。先ほどよりも近くに感じるリコとの距離。背中にリコが乗っている重みが伝わる。リコの細い指が火神の背中や肩を揉み解す。

「あ、の…なんで乗ってるんス、か」
「ん?ああ、このほうが楽だからね。あ、もしかして重かった?ごめんね」
「い、や、違う。何でも、ない。です」
「火神君、今日なんか変よ。大丈夫?」
「うす」

火神の言葉の意味がよく分からないリコにとってみれば、火神の言葉は謎が多すぎた。そんなリコにはこれ以上何を言っても無駄な気がして火神はマッサージに集中することにした。リコのマッサージは本当にうまく、いつまでも続けばいいと火神は小さく祈ってみた。一方日向達(マッサージ待ち)はその光景をものすごい殺気で見ていた。火神の背中に馬乗りするリコ、別になんてことのない光景なのだが、結構密着しているわけで。それが気にくわないのだ。

「…何て羨ましいんだ火神!」
「カントクに馬乗りされて、その上マッサージまで…!」
「お前らはMか。…だがオレもされたい!」
「気持ち悪いです」

自分の番を待ちきれない日向と小金井の発言に伊月が冷静にツッコむが、やはりすぐ後にボケた。そんな先輩達を見て呆れたように黒子が言った。かなりバッサリと先輩たちを切る黒子に、木吉は容赦ないなと苦笑いした。
誠凛バスケ部の中では黒子はかなり普通で、まともな人物である。そんなイメージが強い彼だが、結局彼も同じ部類であることが次の発言で発覚してしまう。

「ボクのリコさんを汚さないでください。ボクのものなんですから」
「え、ちょ、え?!リコさん?!」
「いつの間に?!てか黒子のもんじゃねえだろ!」
「ボクのものです、今決めました」
「今?!つか、お前も十分気持ちわりーよ!」

黒子の発言に今度は2年生全員でツッコむ。というよりも、黒子の「ボクのもの」発言が気に入らなかったようだ。リコは誰のものでもなく、誠凛バスケ部員みんなのカントクである。誰か1人のものになるなんて考えられない。いや、考えたくないのだ。だからと言っていつまでも1人でいる、とは限らない。いつどこで誰にチャンスは回ってくるのか分からないのだ。

「負けませんから」
「オレも。1年だからって手加減しねーからな?」
「日向と同じで、オレも手加減はなしだから」
「たまには個人戦もいいな。楽しそうだ」

そしてたった今、誠凛バスケ部に寵愛されるカントク、リコ争奪戦が始まったのだった。


オリジナルマッサージ


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