薄暗い部室でリコはなぜか木吉に抱きしめられていた。恥ずかしさと嬉しさでわけが分からなくなり、考えれば考えるほど頭の中はぐちゃぐちゃになる。リコは黙って木吉の腕の中で大人しくしていることにした。木吉も何も言わずただリコを抱きしめていた。しばらく無言が続き5分ほど経ったとき木吉が口を開く。

「リコ…、いい匂いするな」
「そ、う?鉄平もすごくいい匂いするわ」
「ん?オレ、汗臭いだろ」

リコの言葉木吉は驚いたように、返事をする。20分ほど前までバスケをしていた彼にとってこの反応は当たり前のことだった。シャワーも浴びずに着替えだけをした彼にリコは笑いかけた。

「鉄平の匂い、私は好きよ」
「オレの匂い?」
「ええ、今日流した汗も含めて鉄平の匂いでしょ?臭いなんてことはないわ」

そんな風に言うリコに木吉は「変わってる」と言うとリコは笑いながら「そうかもしれない」と言った。誠凛のような個性豊かなメンバーに比べればリコはそうでもないけれど、十分変わってると木吉は思った。そう言う自分も変わってる、ということには気づいていないが。木吉とリコは個性豊かなバスケ部メンバーの顔を思い出して2人で一緒に笑った。暗い部室には2人の笑い声だけが響いた。
いつの間にか木吉の腕から解放されていたリコは、今度は自分から抱きついた。そして、いつまでも2人の鼓動は響きあっていた。


私だいすきな匂い


BACKNEXT


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -