▽黄瀬視点

やわらかい笑みに、オレはいつの間にか心を奪われていて、気づけばよく会いに来るようになっていた。最初の頃はあまりいい顔をしてもらえなかったけど、1ヶ月も経てば笑顔で迎えてくれるようになった。と言っても、黒子っち達はすごい不機嫌で笑顔なのはカントクさんのみだけど。

「あら、黄瀬君いらっしゃい」
「あ!今日はカントクさん髪結んでるんスね!可愛いスよ!」
「ふふっ。ありがとう、そんなこと言ってくれるのは黄瀬君だけよ」

オレだけ、か。その言葉がすごく嬉しくて、思わず緩む頬を押さえると後ろからすごい殺気を感じる。多分、黒子っちのもの、だと思われる。自分達だって素直に可愛いって言えばいいのにと思うけど、あの人たちの性格からすると、きっと言えない。

「…あ、」
「あ?」
「髪になんかついてるス、よ?」
「え、本当?や、やだ…恥ずかしい、っ」

照れるカントクさんは耳まで真っ赤に染める。普通にしてても可愛いのに、そんな顔されたら我慢できない。だけど、こんな場所で何かしようなんてことは考えていない。ただ、リコさんのこの表情はオレが独り占めしたいと思っただけ。そんなことを思ってたら、思わず抱きしめていた。誰にも見せないように強く抱きしめる。結局は、さっき言っていた『何か』をしてしまった。

「き、黄瀬、君?」
「…そんな顔、他の男には見せないで、欲しい、ス。オレ以外の男には…」
「初めて見たわ…、こんな風に余裕のない黄瀬君」
「そんなことないスよ。カントクさんのことになれば、いつでも余裕なんて、ないスから」

オレの顔を見てリコさんは「本当ね」と言って笑顔をオレに向けてくれた。


余裕がないのはいつものこと


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