▽リコ視点

素直になれない自分が嫌で仕方なかった。想えば想うほど辛くなる。それでも想いは伝えれなくて、心に閉まったまま数ヶ月経った。その頃には、もう想いが溢れ出しそうになっていた。日向君に気づかれないように、皆と同じように接していたけど、もう限界だということは何となく分かっていた。日向君を見る度に胸はドキンと鳴り、それと同時に苦しくなった。日向君が笑顔を浮かべると私も嬉しくなって、悲しそうな顔を見ると私も悲しくなる。こんなにも私は彼が好きだった。

「カントク、最近避けてるだろ」
「誰を?」
「オレを。バレてないとでも思ったか?」

正直、自分でも何でバレたか分からなかった。彼は言った、オレと話しているときだけ一度も目を合わそうとしていないと。そんなこと気づかなかった。いや、気づくわけない。日向君と話しているとき、胸がドキドキとうるさくて目を合わせるなんてとてもじゃないけどできない。日向君はやっぱり人をちゃんと人を見てるんだなと私はのんきにも思ってしまった。

「何で避けてんだよ。オレ何かしたか?」
「…違うわ。日向君は悪くないの、何も。私が、…っ」

あれ、涙が止まらない。人前で泣くのは嫌なのに。男の前で涙を見せる女なんて、情けなくて嫌いよ。だから今まで泣いたことなんてなかったのに。泣きたいほど辛いことがあっても我慢してきたのに、どう、して?どうしてとまらないの。ああ、ほら日向君も困ってる。だから嫌だったのよ。困らせたいわけじゃないのに、結果的には困らせてる。

「…あのさ、カントク。何を悩んでるのか知らないけど、辛いなら辛いって言え。オレはカントクが辛いときは傍にいたい。だから、一人で悩むな。もっとオレを頼れ」
「…うん、っ。あり、がとう」

今はまだ言えないけど、もっと自分に余裕ができたら思いを伝えよう。


「好きです」が言えない


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