雨、雨、雨、大粒の雨が降ってくる。この大雨のせいで立海テニス部は練習中止になった。多くの者が雨のせいで憂鬱な気分になっていた。仁王もそのうちの一人で突然オフになった今日一日をどう過ごそうかと考え込んでいた。そのとき後ろから見知った少女の声が聞こえてきた。驚きながら振り返れば、ここにいるはずがない竜崎桜乃がピンクの花柄の可愛い傘を持って立っている。
「竜崎?どうしてここにいるんじゃ」
「今日部活無くなったので、仁王さんに会いに行こうかなと思って」
「そうじゃったか。なら今から喫茶店にでも」
気づかれないように桜乃の靴をちらりと見ると、泥と水で可愛らしい靴が汚れていた。何度も水たまりに入ってしまったのだろう。これ以上汚させたくないと思った仁王は近くの喫茶店に入ることにして誘ったのだが桜乃は何か聞きたいことがあるような顔をして仁王を見ていた。
「…仁王さんどうしてさっきつまらなそうな顔してたんですか?」
「そんな顔しとったか?まあ雨の日は憂鬱でつまらんからのう」
「そうなんですか?でも私は好きですよ、ほらまわりの人たちの傘を見てください」
そう口にした桜乃がすっと指差した方にゆっくりと視線を向ける。そこにはただ傘を指す人間がいるだけ。一体何を見ろというのだろうと仁王が不思議そうに首をかしげる。
「いろんな色の傘がありますよね?」
「そうじゃの」
「それを花に見立てると、お花がいっせいに咲いたようで綺麗でしょう?」
桜乃はにっこり笑って仁王を見つめる。しばらくして仁王は吹き出した。
「くくっ…面白い発想じゃのう」
「あっ、笑ってくれましたね!」
桜乃は嬉しそうに仁王の頭を撫でた。
「…なにしとるんじゃ竜崎」
「あ!に、仁王さんが笑ってくれたのが嬉しくて、」
「くくっ…本当お前さんは可愛いのう」
「笑わないでください!」
∵parasol flower
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