※桜乃は大阪の知り合い宅に遊びにきてます



学校の近くにある公園になんとなく立ち寄ってみた。そこは相変わらず人気がなく、シーンと静まり返っていた。「ほんまにここ公園なんかい…」なんてついついつっこんでしまうほど、ボロボロになった公園。ブランコも滑り台も砂場もみんなみんな、汚れていた。

「はー、何しに来たんやろ。あほらし」

そう言って引き返した時だった。雨が突然降りだした。謙也はとっさに近くの木に避難した。すると、肩にとんっと温かい何かが触れる。自分以外の誰かが雨宿りでもしてるのだろうか。ゆっくりと振り向けば、長い髪をみつあみにした小柄な少女が立っていた。

「あ、す、すいませんっ…!」
「っ!い、いや気にせんでええで」

(な、何やこの胸の高鳴りは…!!もしや恋か!これが恋なんか!)

「あ、このタオルよかったら使ってください」

彼女が差し出した手には黄色いタオル。もう片方の手にはピンクのタオル、彼女が使うのだろう。最初は断った謙也だったが彼女が必死でタオルを渡そうとするため自分が折れることにした。彼女の手からタオルを受け取ると彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「俺忍足謙也言うんけど、自分名前なんて言うん?」
「謙也さん…ですね。私は竜崎桜乃です」
「(竜崎?どこかで聞いた名前のような気がするわ…)」

このときの彼は、桜乃が竜崎スミレの孫とは気づいていないだろう。

「桜乃ちゃん!いい名前やな!」
「有難う御座います。謙也さんも素敵なお名前ですね」
「あ、有難う」

彼女とのはじまりは雨だった。


∵雨宿りから始まった俺の恋
(また会えるとええな!)



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