この世に栄口くんは一人しかいない。例え顔が似ていても、性格が似ていても、声が似ていても、笑い方が似ていても、栄口くんは一人だけ。だから、私は栄口くんしか好きにならない。どんなに似ている人がいても、必ず私は栄口くんを選ぶ。それくらい栄口くんが好き。


いつだったか、栄口くんは私に聞いた。

「篠岡は、俺がいなくなったらどうする?別の男を好きになる?」

突然、本当に突然で、私はすぐに返事を返すことができなかった。でも私の答えは決まっている。今もこれからもずっと栄口くんしか好きにならない。いや、好きになれないに決まってる。

「私はずっと栄口くんしか見てないよ」
「…そ、か。ありがと!」

私の言葉を聞いて、安心したように微笑む栄口くんは何だか可愛かった。栄口くんにつられるように私も笑って、それから2人で他愛もない話をしていた。そうやって、2人で過ごす時間が、私は大好きで、これからもそれは続くと信じてる。私と栄口くんは好き合っているから、離れることはない。これから私たちの仲を引き裂くようなことが起きても、2人でなら乗り越えられるから。

「栄口くんは?」
「ん?」
「私がいなくなったら、私以外の女の子を選ぶ?」

今度は私が聞いてみた。もし、彼が選ぶ、と言ったとしても私はへこまない。彼を夢中にしてみせるから。栄口くんが私以外を選ぶと言うのなら、それは私の魅力が足りない証拠。そこから、のし上がっていけばいい。でも、やっぱり。選ばない、と言って欲しい。私は栄口くんが大好きだから。

「…選ばない。当たり前だよ。俺も篠岡以外いらない」

あぁ、良かった。ものすごい安心した自分がいた。夢中にさせればいいとは言ったものの、自信がそんなになかったから。栄口くんにそう言ってもらえて、涙が出るほど嬉しい。私はやっぱり栄口くんが大好きで大好きで仕方ない。


∵特別な人はあなただけ


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