篠岡はいつだって俺達に平等で、贔屓なんて絶対にありえなかった。贔屓という言葉は篠岡の中には存在しないもの。そんなの分かってた。俺と付き合っても部活では、ただの部員とマネジ。その関係でいようと言ったのは俺だったけど、実際平気で居れるのは篠岡だった。俺は部活中でも篠岡のこと考えたりして、無性に篠岡に触れたくなる。

―相当、重症…、だな。

そんくらい俺は我慢してんのに、篠岡は平気で阿部や水谷、田島達と楽しそうに話している。俺が見てるのに全然気づく様子がない。時々水谷がこっちを向いて、へらっと笑い手を振ったりする。お前にやられてもうれしくねえよ。
そんなことを重いながらも見ていると、阿部がさり気なく篠岡の肩に触れたり髪をわしゃわしゃと撫でたりしていた。あの阿部が女子と笑って話している時点で奇跡だ。それなのに、ボディタッチまでしている。
自然と俺は篠岡に向かって走り出していた。自分でもこんなことするなんて思ってもいなかったから、自分にびっくりした。でも先程までの体の重さはどこにもなかった。
ああ、最初から遠回りなんてしなければよかったんだ。

「篠岡!」
「え、いずみく、…きゃ!」

俺はすぐに篠岡を抱きしめてギッと阿部達を睨みつけた。阿部はすげえ驚いた表情で俺と篠岡を見た。水谷はこの世の終わりという顔をしている。田島に至っては珍しく放心状態で、ぽけっとしている。俺はそんな阿部達の表情に笑ってしまいそうになる自分になんとか耐えて、一言言った。

「篠岡が可愛いから触りたくなるのはわかるぜ?でも俺のものだから」
「い、泉くん…?」

篠岡はまだ状況がよく分かっていないみたいだった。顔を真っ赤にして首を傾げる。その仕草もまた可愛くて、俺は理性を保てなくなりそうだった。いつだって篠岡は無意識にそういう仕草をする。そのたびに俺は必死で耐えてきた。けどこいつらにそんな仕草を見せたりしたら絶対にこいつらは我慢できない。

だから、篠岡は俺のものだと言っておく。

「篠岡、行こうぜ」
「あ、う、うん!阿部君たち、ちょっとごめんね…!」

篠岡は律儀にお辞儀をして、俺についてきた。俺は篠岡の手を握り、部室に連れて行く。とりあえずはそこでキスして、エネルギーを補充しようと思う。


∵かわいいけど俺のもの
(篠岡はキスしているときまで、かわいかった)


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