埼玉と群馬、いくら県が隣同士でも距離を考えると遠くて滅多に会えずにいる千代。千代とは三橋を通じてゲットしたメアドを使ってメールしたり通話したりしているけど、それだけじゃ全然物足りなくて。会いたい、その気持ちだけが大きくなる。早く会って抱きしめたい、笑顔を見たい、キスしたい。そんな強い気持ちだけが俺の心を支配していた。

そんなとき千代から俺にとっては嬉しい知らせが届いた。西浦高校の文化祭が来週の土曜日に行われる、という内容が。俺は一人ガッツポーズを決め、再び文字を打ち始める。もちろん、返事は“OK”と。

――土曜日
待ちに待った土曜日は意外とすぐにやってきて、俺は朝急いで身支度を済ませ朝一の電車に乗り込んだ。朝一じゃなくても良かったけど、早く千代に会いたくて仕方がなかった。千代に早く会いたくて、堪らなかった。もう少しで会えると思うと、自然と頬が緩む。その緩む頬とあと口を隠し、俺は千代のことだけを考えて深い眠りに落ちた。次に起きたのは丁度降りる駅の一つ前で、目的の駅で降りることができた。俺は千代に貰った招待状を手に、駅の改札口を通った。


そして、俺は無事に千代に会うことができた。千代のクラスはもう準備が終わったらしく皆休憩に入っていた。

「千代!」
「あ、修吾くん…!本当に来てくれるなんて嬉しい」
「…千代に会える機会なんて滅多にないからさ。会いたかったよ、千代」

千代は恥ずかしそうに笑い、俺を優しく抱きしめてくれた。本当は俺から抱きしめようと思っていたけど、千代から行動してくれたので俺は尚更嬉しくて抱きしめる力を強めた。千代は苦しいですと言いながらも、俺に笑顔を見せてくれた。久々に見た千代の笑顔に俺はもうそれだけで幸せになれた。
邪魔が入らない幸せな時間を過ごしていたはずなのに、いつの間にか俺の回りには俺の最大のライバルでもある西浦野球部員がいた。それもものすごい形相で(特に阿部とかいうキャッチャーが)俺を見ていた。

「三星のピッチャーがどうして西浦の文化祭にいるんだよ」
「…何?来ちゃ駄目なの?」
「別に駄目とはいってないけど。どうしてかなーと思って」
「…千代に会いたかったから来た、それだけだけど?」

俺がそういうと更に睨みをきかす野球部員。こいつらが千代のことを好きなのは分かっているから、怒って当たり前だと思う。でも俺だって千代のこと好きだし、この気持ちは誰にも負けない自信がある。だから、今ここで千代を渡せと言われても渡すつもりなんて全くない。

「なんでここにいるのかは知らないけど、しのーかは俺達のマネジだ!絶対あげない!」
「ちょ、田島興奮しすぎ…っ。でも、俺も田島の意見に賛成かな。俺達のマネジなのに他校の男に取られるなんて気分悪い」
「おお、そうだな」

田島という男に賛成する西浦のやつら。なんかすごく居心地悪いんだけど。心配そうに俺を見つめる千代は相変わらず可愛くて、俺は心配すんなと髪をわしゃわしゃと撫でた。再び、目の前の男達に目線を移して俺はにこと笑ってみせた。三橋達は一瞬驚いたような表情をした。

「俺の千代に手を出したら三橋でも容赦しないから。手を出したとしても、千代は俺しか見えてないから振られるよ?傷つくだけだから止めといたらどう?それが上策だと思うけど」

思っていたことと忠告をする。西浦のやつらは呆然と立ち尽くして、というより石化していた。全く動く気配がない。俺は千代の手を握り、階段に向かって走り出した。千代と二人きりになれるところを探すために。嬉しいことに、西浦のやつらはまだ固まったままだし。俺はにやりと笑って、千代の手を更に力を入れて握った。千代もにこりと笑って握り返してくれた。やっぱり千代は可愛い!絶対に渡さない!


∵隙を見せたらそこで終わり
(千代を守る為には隙なんて見せない!)


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