天気がよい今日、桜乃は仁王とデートをする。昨日は緊張してなかなか寝付けなかった桜乃。目の下のクマを化粧で誤魔化し、夏らしいワンピースを着て髪型もいつもとかえて出かけた。
「よかったー…迷わず来れたみたい」
超方向音痴の桜乃、今日は珍しく迷わず来れたようでにっこり笑顔。その笑顔はとても可愛く、桜乃の傍をわざわざ通っていく者もいた。そんな可愛い女の子をナンパしようという悪い男もいる。今まさにそんな状態になろうとしていた。
「おいっあの子、可愛くね?」
「おー本当だ。声かけてみっか」
1人は耳にピアスをつけて金髪のチャラい男、もう1人は口と舌にピアスをつけて茶髪の男。あきらかに不良の分類に入るような格好の者たち。その男たちのターゲットになってしまった桜乃。
「ねぇねぇ、誰か待ってんの?」
「あ、は、はいっ」
普段接触のない人種に話しかけられ怯える桜乃。しかし周りの大人たちは見てみぬフリをして通っていく。
「あの、な、なにか?」
桜乃は怯えながらもはっきり聞こえる声で問いかけた。
「いやー可愛い子だから一緒に遊びたいなーっと思って、なぁ?」
「そうそう。とりあえず、名前教え「そこまでじゃ」
桜乃の腕を無理やり引っ張り名前を聞こうとした不良。しかしその行為はある人物によって阻止された。
「あぁ?何だてめぇ?ケンカ売ってんのか?」
当然、不良は怒って迫ってくる。今にも殴りかかってきそうな迫力だ。
「俺と勝負しようとはいい度胸じゃのう…じゃが俺には勝てんぜよ」
助けてくれた人物、それは桜乃の恋人の仁王であった。仁王は不敵な笑みを浮かべ、不良の手をぐぐっと反対にひねりあげた。
「いっいてててててててっ」
簡単に不良をおさえつけ、反省させることに成功した仁王。その様子見ていた桜乃は驚きながらもどきどきしていた。
「(仁王さん…かっこいい…)」
「桜乃、すまんのう…俺が遅れてきたばかりに…」
「あ、そ、そんな…私、かっこいい仁王さんが見れてすごく得した気分です」
そう言って、桜乃は仁王の手をすっとさすった。
「怪我・・・しちゃいましたね…」
「あぁ、このくらいなんともないぜよ。心配しなくても大丈夫じゃ」
仁王はいつもの笑顔を浮かべ、桜乃の頭を撫でた。
「あ、じゃ、じゃあお礼って言ったら変かもしれませんが…」
「ん?」
仁王が桜乃の顔を見た瞬間、ふわっと花のいい香りがした。一瞬だが、桜乃の唇が当たったような…。
「助けてくれたお礼ですっ」
「とんでもないお姫様じゃな、まったく」
∵お礼にキスを差し上げます
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