9月25日、それは赤也にとっても桜乃にとっても特別な日。2人は1ヶ月前から会う約束をしていた。

「赤也ーハピバー」

いつものように元気よく部室に入っていくと祝いの言葉がふりかかって来た。あまり気持ちが込められているとは言えない言葉が。

「もう少し気持ち込めたらどうッスか?」
「文句言うなよぃ!祝ってくれただけでも感謝しろぃ!」

噛んでいるガムが口から飛び出すんじゃないかというくらい大きな口で話すブン太。口の中が丸見えで汚い…そんなことを思っていた赤也にぞくぞくと他のメンバーも祝いの言葉をかけていった。

「ハピバじゃな。赤也、ちっとは頭よくなったか?」

祝っているとみせかけて思いっきり失礼なことを言っている仁王。だが赤也は気づいていない。

「ありがとうございまっす!」
「ほれ、俺からは新作のゲームじゃ」
「う、うおおおお!これ欲しかったやつッス!嬉し…ん?」

仁王がポンと投げた綺麗にラッピングされた箱には新作のゲームが入っていた。しかしそれは偽物だった。

「なんスかこれー!空のゲーム箱にゲームのチラシを貼っただけじゃないッスか!」
「作戦成功じゃー。赤也を落とすのなんてやっぱり簡単じゃな」

鼻でフッと笑われ赤也はフンッとそっぽを向いた。
しかしプレゼントをくれるのは仁王だけじゃないはず…と赤也は思っていた。


「赤也、プレゼントなんだけど…」
「はいはい!」

にこにこと満面の笑みで振り向くとそこには俯いている幸村達の姿。

「俺達からはないから」
「ええええ!」
「赤也、君は桜乃ちゃんとのデートがあるじゃないか。それで十分だよね?」
「で、でも…」

反論しようとしたが魔王には勝てず、仕方なく従った赤也。だがやはり納得できない様子であった。

「ちぇっ」
「ほら赤也、早く桜乃ちゃんに会いにいってあげて」
「え、練習はどうするんスか?」
「今日は特別、赤也だけ練習なしだよ」

幸村はにこっと笑って赤也の背中をおした。背中にかすかに残る温もりが赤也を自然と笑顔にさせていた。

「行って来ます!」
「「行ってらっしゃーい」」

「なんだかんだ言って、2人の恋応援してる俺らって…」
「あーまあその、なんだ…。それだけ赤也のこと可愛がってるってことだな」

ブン太とジャッカルをボソッとそんなことを話していた。

「桜乃ー!」
「あ、赤也さん!」
「わりぃわりぃ、急に時間変更して」
「いいえ!寧ろ嬉しいです…!」

頬を赤らめてそう言った桜乃はとても可愛く、赤也はもうすでに幸せな気分であった。しかし桜乃はすぐにシュンと表情を曇らせた。

「赤也さん…私プレゼント何も用意出来なかったんです…。すいません…」
「桜乃、俺はお前と一緒にいれるだけで十分幸せなんだけど?」

桜乃の髪をわしゃわしゃと撫でて顔を覗き込む。すると桜乃は瞳に涙をいっぱいためていた。今にも零れ落ちそうな涙。

「桜乃?」
「本当にごめんなさい…っ」
「…桜乃」
「え?」

突然両腕を引っ張られ驚く桜乃。そんな驚きもつかの間、桜乃は赤也に抱きしめられていた。桜乃は驚きのあまり涙がひっこんだ。

「…桜乃謝りすぎ。俺が泣かせたみたいじゃん…」
「あ…ごめんなさいっ」
「ほら、また…」
「ご、ごめ「それわざと?」

言ったそばからこれだよ…と呆れた赤也。赤也は桜乃の口を塞いだ。長い長い、キス。今までとは違うような、長くて深いキス。

「誕プレはコレでいいっしょ?」
「こ、こんな強引なキス…」
「そんなこと言って感じてたくせに」

ニヤリと笑った赤也に「感じてません!」と必死で否定する桜乃。そんな2人の楽しいデートのはじまりはじまり。


∵誕生日、とびきり甘いキスを!
(もう…誕生日おめでとうございます!)



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