俺だけがどきどきしているようで、なんか悔しかった。


「竜崎、何髪につけてんの?」
「へ…?今日はピンどめも何もつけてないはずなんだけど…あ、ゴムが絡まってる」

普段と同じように綺麗に編んであるみつあみの間に絡まっていた1本のゴム。どうやら予備の髪ゴムだったようで、予備のゴムがなくなったと騒いでいた桜乃は安心したように笑った。そして絡まっていたゴムを取ろうとするが複雑に絡まっているようで、結んでいた髪をほどかないと取れそうにない。桜乃は仕方なくおさげを解いた。

「…っ」

その瞬間どきりとリョーマの胸がなった。
ふわりとゆれる綺麗な黒髪。さらさわと風になびき桜乃がどことなく大人っぽく見えた。リョーマの頭からその姿が絡まったゴムのように離れなくなった。

「…んー…取れないなー…」

桜乃はそんなリョーマの気持ちを知らずに今もまだゴムを取ることに必死になっている。それが何故かとても悔しく感じる。
仕返しに桜乃の髪を軽く引っ張るリョーマ。

「え?リョ、リョーマ君痛いよ…?」
「…」
「どうしたの?」
「別に何でもない」

(あまりにも綺麗で見蕩れてたなんて、悔しいから教えてやらない)


∵髪をほどいた君に一目で恋に落ちました



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