頑張って、その言葉だけでも伝えに行きたい。

「明日なんですか?」
「うん、そうなんだ。本当はもう少し早めに伝えようと思ったんだけど、最近疲れてるみたいだったから竜崎さん」

1ヶ月前見事恋人になれた2人だが、距離は遠くお互い多忙な日々。会える日なんてほとんどなく、週2の電話が唯一の楽しみであった。

「あ、気にして下さっていたんですか…」
「当たり前だよ、俺は竜崎さんの恋人だよ?」

優しくそう言った幸村に胸がときめく桜乃。

「竜崎さんの声聞いたらなんか明日頑張れそうな気がするよ」
「私なんかの声でよかったら、どんどん聞いてください」

嬉しい幸村の言葉に思わず変な言葉を口走ってしまった桜乃。顔を真っ赤にさせ口を手でおさえ、やっちゃったーという顔をしている。だが、電話越しの幸村には当然のごと伝わっていない。

「ふふっ…じゃあもう遅いし切るね」
「あ、はいおやすみなさい」
「うん、おやすみ」

まだ切りたくない、あと少しあと少し…。気持ちだけがふくらみ続けるが、行き場のない気持ちは私の心の奥底でたまったまま。桜乃は胸をおさえながらあることに気づいた。

(私…自分で動こうとしてなかった…。いつも寂しい寂しいって思うばっかりだった…。明日、応援しに行こう)

桜乃がそう決意した時はすでに電話を切ってから5分が経過しようとしていた。

そして翌日、幸村だけを必死に応援する三つ編みの女の子の姿が見られたとか。


∵「頑張れ」その言葉だけでも
(幸村さん、頑張ってください!)
(え、竜崎さん!?)



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