私はお金持ちでも特別美人でもお嬢様でもない。跡部さんにつり合っていない。自分でも分かってる、だから余計辛くて寂しくて悲しくなる。

「…の。おい、桜乃」
「あ、な、何ですか?跡部さん」

ボーッとしている桜乃を何度も呼んだ跡部だがなかなか反応してくれず、少々拗ね気味の跡部。桜乃はすいませんすいませんと何回も謝った。

「どうした?俺のデートプランはつまらなかったか?」
「あ、そうじゃないんです」

確かに跡部のデートプランは完璧かつ桜乃にピッタリであった。だが、跡部と自分の立場があまりにも違いすぎて時々切なくなりボーッと考え込んでしまったのである。

「あの…跡部さん」
「ん?」

意を決して話しかけた桜乃に跡部は優しく返事をしてくれた。跡部の優しさが今の桜乃には辛く、涙がこみ上げてきた。

「私といてつまらなくないですか?」
「あ?」

予想もしてなかった言葉に一瞬目が見開いた。しかし跡部はすぐに言葉を返した。

「つまらなくねぇよ。お前は何を心配してんのか知らねぇが、俺はお前と過ごせるこの時間がすごく大切だと思ってる。お前は違うのか?」

とても熱い言葉に桜乃は涙がこぼれた。

「違わないです…」
「だったらいいだろ。そんなつまんねぇこと考えんな」
「はいっ」

跡部はぎゅっと桜乃を抱きしめ、舌で涙を舐め取った。

「もう泣くな」


∵何も心配しなくていい
(泣いてるお前も可愛いけどな)



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