▽狩屋視点

すれ違うときに彼女から甘い香りがした。香水とかじゃなく、彼女自身からした気がした。何の匂いかは分からないけど、とにかく甘くていい匂い。女の子だなあって感じる。って何かこんなこと言うと変態みたいだからこのへんでやめとくけど。

***

「あ、狩屋君お疲れ様!はいタオル!」
「ありがとう空野さん」

タオルを受け取った瞬間にまたあの甘い匂い。ふわり、と俺の鼻をくすぐる。一度匂いを覚えてしまうと匂いが忘れられない。それに空野さんの匂いはまた嗅ぎたくなるよう
な甘い匂いだから尚更。この匂いはシャンプーかな、なんて…俺また何を考えてんだろ。変態確定じゃん。あー…やめやめ、こんなこと考えるのはやめろ俺。

と思ったけど本人が目の前にいるこの状況で考えずにはいられない。

「あの、空野さん?他の人にタオル渡さなくていいの?」
「うん!大丈夫だよ。もう他の人には渡してきてあるから狩屋君が最後」
「あぁそうなんだ」

どこかほかの所に誘導させる作戦は見事に失敗。どうしたらいいのか、と新しい作戦を考えてみるけど思いつかない。だからとりあえず笑ってみた。空野さんは俺に笑い返すだけで、やっぱり動く気配はない。あぁ、もう本当にどうすればいいんだよ。

「狩屋君って私のこと嫌い?」
「え、どうしてそう思うの?」
「私と一度も目を合わせようとしないから、嫌いなのかな?って」

少し悲しそうに笑う空野さんに俺は思い切り首を振って見せた。だけど空野さんは俺が無理していると勘違いしているのか「嫌いなら嫌いでいいよ」って言う。違う、本当に違うのに。どうすれば、どうすれば伝わる?嫌いじゃないって、伝えたい。

気づけば俺は空野さんを思い切り抱きしめて、耳に唇を近づけた。

「…寧ろ、その逆だよ」
「それって…?」
「うん、好きだよ空野さん」


嫌いの反対を君に伝えたい
(…ちゅーか大胆だね、狩屋)
(あ、人前だった)

−−−−−
相互して下さったしのさんに捧げます。相互ありがとうございました。


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