この男はこんなにも人に甘えることができる人間だっただろうか、葵は数分間今の剣城の行動に戸惑ってしまった。というのも、剣城は今葵の膝を枕にして昼寝をしているのだ。雷門イレブンの中でもクールで人に頼ることをあまりしない普段の剣城を知っている人間なら今の行動を見れば相当驚くだろう。しかし今一番驚いているのは、膝枕をしている葵だった。

(…突然「寝るから枕になれ」なんて言うから驚いたなあ)
(あ、まつげ意外と長い。それに寝顔は結構可愛い…)

目をつぶっている剣城を見て寝ていると思い込んだ葵は剣城の顔を近くでじっと眺めてそう思った。こんなに近距離で剣城の顔を見るのは初めてである葵は、つい長い間眺めてしまう。すると瞑られていた剣城の瞳がゆっくりと開き、葵の瞳に目を覚ました剣城の姿がうつった。

「…何だ、そんなにじろじろ見て」
「あ、ご、ごめん。その、意外と寝顔可愛いなあ…なーんて」

恐る恐る剣城にそう言うと剣城はただ優しく微笑んだ。初めて見る優しい笑みに葵の胸が高鳴った。今まで見せたことがない、優しくてあたたかい笑顔は寝顔以上に可愛くて、しばらく見惚れてしまう。しかし剣城がその優しい笑顔からニヤニヤとした笑顔に変わったことに気づき、見惚れてしまったことを後悔した。

「何ニヤニヤしてんの」
「あぁ、別に。ただ空野が熱い視線を送ってくるから、ついニヤけた」
「は?!私がいつ熱い視線送ったわけ?」
「今さっき送ってきただろ。俺のことじっと見つめて」

見惚れていたことがバレていた、それがあまりにも恥ずかしく葵は頬を真っ赤に染めて剣城の言葉を否定する。だが、その赤くなった頬が、何よりの証拠である。いくら否定しても、葵の方が分が悪い。葵はどうにも逃げられないこの状況に焦りつつあった。しかし剣城は楽しそうに葵の百面相を眺めているだけである。その余裕の態度に葵は余計に追い詰められる。

「ひ、膝枕もうやってやんないから!」
「それは困る、お前の膝枕すげえ気持ちいいから」
「変態!剣城君なんかそこらへんで寝てなよバカ!」

思いもよらない剣城の返答に葵は面食らい、つい口が悪くなってしまう。だが剣城はとくに気にした様子もなく、寧ろ楽しそうに笑っている。葵はそれを見て、「ああもう敵わない」と悟り、おとなしく口を閉じることにした。


しあわせは此処にある
title by Aコース

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相互ありがとうございました。


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