狩屋は目の前に差し出されたイチゴを食べようか食べまいか、迷っていた。ニコニコと満面の笑みでフォークに刺したイチゴを狩屋の口元に寄せる空野。狩屋は不機嫌そうな表情を見せると空野はさらにググッとイチゴを近づけてくる。それ以上不機嫌な顔をすれば、口の中に無理やり入れられそうな勢いだ。狩屋は少し考えた後、さっさと食べてしまうのが上策だという結論に至り、それを口に入れようとしたが、さっとイチゴは狩屋の口をよけた。

「…空野さん」
「あははっ。なあに、本気にした?」

空野は悪戯が成功して喜ぶ子供のように、屈託のない笑顔で狩屋を見ていた。くすくすと可愛らしい笑い声が耳に入ってきて、ついその悪戯を許してしまいそうになる。だが遊ばれてそのまま終わり、なんて狩屋は納得がいかない。何かお返しになるようなことを、考えてみる。そして、一ついい案が思いついた。

「ねえ、空野さん。あっち向いて」
「え?何かある…の…ってえ!」

空野が素直に狩屋の指差す方向を向けば、その隙をついて狩屋は空野の頬に口付けた。ちゅっと可愛らしい音がした後、ボンッと空野の顔は先ほど狩屋をからかうために使ったイチゴのように赤くなった。その顔を見て、今度は狩屋が悪戯が成功して喜ぶ子供のような笑顔を浮かべる。

「すごい顔」
「ば、ばかっ!誰のせいよ!」

真っ赤になって狩屋の肩を思い切り叩くと、狩屋は痛いなあといって肩をおさえる。マネージャーなんだからもっと選手に優しくしろよ、なんて言うが空野はしばらく狩屋には優しく出来そうにないと心の中で思った。


彼を意識した瞬間から
(もう私は恋に落ちていたのかもしれない)

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こっそりこっそりA様への一周年祝いの小説。一周年おめでとうございます。


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