▽葵視点

最近二人きりになれる時間が少ないと感じているのは私だけじゃないと思う。多分天馬も。何となくだけどそう思ってくれている気がする。
サッカー部のみんなや茜さんたちといる時間は嫌いじゃないし、寧ろ好きなぐらい。居心地が良くてすごく楽しい。一緒にいることが当たり前になってきているからそう感じても仕方ない。それは決して悪いことではないんだけれど、私は気づけば天馬と二人きりになれる時間を探している。
天馬と一緒に過ごす時間は、他の部員と過ごす時間よりもすごく大切で、大事にしたいと思っている。天馬が笑顔で口にする「葵帰ろう!」という言葉は私にとっては魔法のような言葉で。一瞬で私を笑顔にさせ温かい気持ちにさせてくれる。

そろそろ聞こえてくるだろうその魔法の言葉を私は今か今かと耳を澄まして待ってみる。天馬らしき足音がだんだんと近づいてくる。

(あ、そろそろかな)

「葵ー!!帰るよー!」

(ビンゴ!やっぱり天馬だ)

あれだけ動いたのに元気いっぱいの天馬。とびきりの笑顔で大きく手を振る天馬に私も手を振り返す。

あったかくて眩しい笑顔。その笑顔に今日も私は笑顔になる。これから始まる二人きりの楽しい時間に心を躍らせ私は天馬の下へと駆け寄る。うふふとついにやけてしまう私を見て天馬は不思議そうに首を傾げる。

「なにー?葵何か良い事でもあったの?」
「どうして?」
「顔に嬉しいって書いてあるもん」

これだけニヤけていればバレて当然か。いくら鈍い天馬でもわかるよね。でもまあ理由までは分からないだろうからいいけど。
何でもない、と答えた私に「ふーん」とだけ答えた天馬はいきなり走り出す。そして数メートル走ったところで一旦止まり「葵競争しよう!」と叫んだと思ったらまた走り出した。私の静止のお願いも無意味で、天馬はどんどん遠くなっていく。ああもう!ほんとにいつも突然なんだから。
走り出してからまだそんなに経っていないというのに天馬の背中はもうかなり小さい。私はその背中に少しでも追いつこうと全力で走ってみるけど一向に追いつきそうにない。

「天馬のばかー!!手加減してよ!!!」

大声でそう叫ぶ私に天馬はごめーんと一言謝るとまたあの笑顔で「ここで待ってるから早くおいで!」と口にした。
私の大好きな笑顔を浮かべて待っている天馬を見て私はバレないように小さく笑う。

(やっぱり天馬といる時間すごく楽しいや)

改めてそう思いながら、私は数メートル先で待つ天馬の方に走り出した。


いま、わたし青春してます

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