▽太陽視点

白い家具で統一された病院はどこか息苦しくて、けれど窓から時折入ってくる風がその息苦しさを少しやわらげてくれる。特にやることがなく、風に揺れるカーテンをただボーっと見つめていればガラリと扉が開く音とともに元気な声が響いた。

「太陽!!遊びに来たよ!」
「葵!今日も会いにきてくれたんだね!」

勿論だよ、なんて笑って言ってくれるが多分葵は相当疲れているはずだろうと思った。革命の風となった天馬のいる雷門は、ずっとずっと戦い続けなければならない。負けてはいけない。だから練習量だってそこらの学校なんて目じゃないくらいに多い、そうなるとマネージャーも仕事の量が増えるだろう。それなのに葵はその仕事を毎日こなして、部活帰りにこうして病室まで会いに来てくれる。そして20分間と短い間ではあるが話し相手として傍にいてくれる。、けれど葵は優しいから…多分こうして入院しているのが俺じゃなくてもお見舞いに来てくれるって分かってる。けど、少しぐらい期待したってバチは当たらないよね?

「ねえ、葵、」
「なあに?」
「ずっと考えてたことがあるんだ。…葵はどうして毎日会いに来てくれるのかなって」

こうして二人でいられる時間は今しかないから、今だけは俺だけのことを見ていてほしい。葵が誰に恋をしていて、誰を見ているのかなんて分からないし知らない。知りたくもない。だけど今だけだから、この20分間は俺だけの葵でいてよ。俺のものになってなんて言わない。ただ葵の20分間を俺にくれるだけでいいんだ。ワガママは言わない、葵を困らせたくはないから。けど、せめて20分間は俺にちょうだい。好き、なんて言わない。傍にいられるだけで十分、そう思ってたのに、言葉に出すつもりはなかったのに、気づけば言葉を口にしていた。葵は顔を赤くするわけでも、驚くわけでもなく、俺をまっすぐに見つめていた。その瞳からは感情が読み取れない。嬉しいのか悲しいのか、どちらともとれない瞳で見つめられた。

「太陽、本当に分からないの?」
「え?」
「…私、何とも思ってない人に会いに来るほど暇じゃないよ。太陽だから会いに来てたの。意味、分かるでしょ?」

真っ赤な顔してそう言われて、俺はやっと葵が会いに来てくれていた理由を知った。知った瞬間、俺は情けなくも葵につられて顔がだんだん赤くなっていった。お互い顔を赤くして照れあってしまい、葵が今日帰ることができたのはそれから10分後のことだった。


熱が伝染しました
(頬が熱いよ、これが恋なのかな、なんてね)

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涼宮さんへ。
他校×葵、ということで雨葵書かせて頂きました。雨宮くんの性格が迷子すぎて途中泣きそうになりましたが楽しんで書くことができたので良かったです。


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