- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-繋がり-


綱手が三歳を迎えるという頃には里の商店街も前より商店が増え、センリが知らない顔も増えていたが、相変わらずの人当たりの良さと無邪気さでそれもどんどん少なくなっていく。

センリが甘味処や食堂にいれば声を掛けてくる者達も多かった。

戦争をする以前の時の様に、たまに柱間やマダラを手伝い、綱手や子ども達と遊んだり、家の事をしたり修業をしたり、ミトやヤヨイとお喋りをしたりする日常に戻った。


マダラがいない日中に、イズナと食事を共にする事もあった。しかし学校が休みであれどイズナの仕事自体は沢山あるらしく、いつも書類作成や授業編成などに追われていた。


その日は少し遅めの昼食を商店街の食堂で二人でとっていた。秘伝のソースと調理工程でつくられたカツ丼をイズナとセンリが揃って食べていると、そこに柱間とマダラが現れた。

こうして商店街で二人に会うのは多くはないが、珍しい事ではなかった。柱間は仕事量が少ない時は「休憩しないと死んでしまう」と言ってよく商店街に繰り出しているからだ。ぶつぶつ文句を言いながらもそれに着いてくるマダラは何だかんだ楽しそうでもあった。

他に客が居らず貸し切り状態だった為柱間は周囲にあまり気を使わず大きくため息を吐いてテーブルに突っ伏していた。


「はあ〜疲れたぞ……オレはもうダメぞ…腰がやられて動けん」

「おいおい、火影がそんなんでどうするんだよ」


疲弊して動けないという真似をする柱間を見てイズナが眉を下げた。


『マダラにおんぶしててもらいながら仕事しなよ!』

「おい、ふざけるな。腰が弱った老人の介護なんざ御免だ」

「兄さんが火影をおんぶしてるのなんて見たくないね。ちょっと気持ち悪い」

「お前ら兄弟はオレに厳しすぎないか…」


イズナと柱間は、兄のように仲が良いという訳ではなかったが、悪い訳でもなかった。

火影でもある柱間の強さはイズナも認めていたし、兄の親友であり、センリの友人でもある柱間はイズナにも分け隔てなく接していたのでそれに応えていると自ずと会えば話す関係にはなっていた。
千手一族と争っていた時から十数年も経てば、憎しみはもう過去のものになっていた。



「……しかし、センリは体格の割に本当によく食うな」


回復した柱間が『美味しい!』と言いながらカツ丼を頬張るセンリを見て不思議そうに言った。


「姉さんは元々女にしてはかなり食べる方だからね。少し前には団子を五本と豆大福も食べてたし」

「イズナより食ってるだろうな」


センリは小柄だったが、昔から成人した忍の男性と同じくらいの量を食べていた。イズナは忍にしては少し少食だったのでそれよりもセンリの方が多く食べているのは一目でわかる。

センリはもぐもぐと口を動かしながら三人を見た。


『よく言われる。何でそんなに食べるのにチビなんだって』

「まあ確かに食う割に、センリは小柄な方だな」


美味しそうに頬張るセンリを微笑ましそうに見つめて柱間が言った。


『みんなが大きすぎるんだよ!平均身長が高すぎるの』


センリが言って自分で頷く。
特に忍の平均身長は高いように見えた。センリが見てきた限り柱間ほどの身長でも別に珍しくないくらいだ。イズナは175センチだったが、それでもむしろ少し低い方だった。


「そうか?」

『そうだよ。私がいた世界では男の人は170センチで女の人は158センチくらいが平均だったんだから』


センリが思い出しながら言うと三人は驚いた表情をした。


「それは確かに低いね。まあ忍者がいなかったんだからそのくらいでもいいんじゃない?」

「しかしどちらにせよセンリは平均身長よりも低いな」


イズナに続いてマダラは真剣に言ったが、センリは大袈裟にガーンと絶望的な顔をした。


『酷いぞマダラ……そんな事を真顔で言うなんて』

「柱間の真似をするな」


先程までの柱間のようにセンリがテーブルに顔を付けているのでマダラが突っ込む。


「小さい方がセンリらしいぞ!」

『ん…まあそうだよね。見た目は子ども、頭脳は大人!』


センリはすぐに元気を取り戻し決めポーズをするとイズナが笑った。


「何だよそれ……。全く…よく子ども達が“火影とセンリ様は似てる”っていうけど…あながち間違ってもいないんじゃないか?」


口元を手で抑えながらイズナが言った。


『それもよく言われるよね!』

「オレもミトや扉間によく言われるぞ」


センリと柱間は頷きあっていたがマダラは納得いかないようだった。


「センリは柱間のように下品ではないし、柱間より強い」

「下品とは何ぞ!」


センリと柱間は性格的なところに似通った部分があったが、どちらもよく知っているマダラからすれば似ていない部分の方がよく目についた。

しかしそれでも似ていると言われたら否定も出来ない。

理想や綺麗事を堂々と口にし、少々天然だが愛情深く、誰にでも平等に接する事が出来る。その反面実力も高く、どんな状況下でも億さず戦う事ができる。

人々の心を集められる魅力があるのは二人とも同じだった。


『大丈夫だよ、本当はマダラは柱間の事大好きだから……ちょっと待って柱間。めちゃめちゃ綺麗に割り箸割れてるよ!すごい!』

「お、本当ぞ!ラッキーだな」

『さすが木に関しては抜かりないね!』

「まあな!ハハハ!」


柱間が自分で割った箸が綺麗にふたつになっていた事に喜び合う二人を見てマダラとイズナは同じ様に微笑んだ。


「馬鹿なところだけはそっくりだな」

「その通りだね」


忍の神とささやかれている柱間と、忍界の女神と謳われているセンリは確かに似ているのかもしれない。最愛の人と親友を見比べてマダラは少しだけ認めた。


だからこそ自分はこの二人が好きなのかもしれない。

言葉にこそ表さなかったが、いつも自分に笑いかけてくる柱間とセンリは大切な存在だった。それが里にとってもそうなのだろうと考えると本当に二人は信仰的対象に思えてきてマダラは可笑しくなって気付かれないように笑った。ただ、その存在が大切だと思った。
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