- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-繋がり-


特に予定がない日、センリは柱間の家を訪れて綱手と遊びに耽ったりもした。言葉を話せるようになると綱手はどんどん自我が芽生えてきてお転婆な幼女になった。

まだほんの子どもなのに強気な発言は、母に似たものだった。だがミトも柱間も綱手をかわいがった。自分が産んで育てた息子とはまた違ったかわいさがあるのだろう。特に柱間は初孫であり女の子でもある綱手をベタベタに甘やかしていた。

趣味で育てている盆栽を間違って綱手が壊してしまった時も、綱手に怪我はないかと必死の形相で心配していた。幼い頃同じ事をした自分の時は“鬼の形相”で怒っていたのに、と浅葱はぼやいていた。


多少わがままなところがある綱手だったが、笑った時の顔だったり、自分を呼ぶ声に浅葱の片鱗を垣間見る事が出来てセンリも嬉しかった。

特に組み手ごっこで遊ぶ時はまるで幼い頃の浅葱そっくりだった。本気でぶつかってきて全く容赦が無い。「もくとんのじゅつ!」と叫んで体当たりをしてくる綱手に毎回吹っ飛ばされる真似をしながらもセンリはその時間を楽しんでいた。


『うう、覚えていろ、綱手め…』


浅葱と組み手ごっこをしていた時と同じ台詞を吐いて、畳に寝転がりながらセンリはがっくりと頭を下げた。


「どうだ!つなのかち!」

「おお、綱はすごいの!これで十七勝目ぞ!」


エッヘンと得意げに腕を組んでいる綱手の頭を柱間が撫でる。


「ほら、綱手。センリ様を起こしてあげなさい。全く……力の加減を知らないんだから…。センリ様、すみません、大丈夫ですか?」


センリが顔を上げると眉を下げ申し訳なさそうな浅葱の顔が目に入った。いつの頃からか随分礼儀正しい態度をとるようになった浅葱にセンリは、『大丈夫』とにっこりする。


「センリ!もういっかいしよう!」

「綱手…今日はもう終わりにしなさい。センリ様も疲れてるんだ」


綱手はセンリの腕を引っ張って言ったが、浅葱がそれを制した。途端に残念そうな顔をする綱手をセンリは苦笑しながら見た。


「全く。浅葱は綱に厳しいのう」

「父様は綱手に甘過ぎるんです。この前も綱手に賭博なんて覚えさせて…」


いつも悠然と火影として命を下している里長が、息子に圧倒されて頬を引きつらせていると知ったら里の忍達はどう思うのだろうかと考えると可笑しかった。

センリがその様子を見て笑っていると綱手が柱間の手を下から引っ張った。


「とばく!おじいさま、つな、とばくやりたい」

「おお、もちろんいいぞ〜」


だが浅葱はそれを許さなかった。


「賭博は絶対だめです。全く、母様に怒られますからね!」

「しかしだの…」

「おじいさま〜」


綱手の甘えた上目遣いと浅葱の眉を寄せた顔とを交互に見て柱間は考えていたが、結果逃げる事にしたようだった。

次の瞬間にはボヤンと音を立てて柱間の木遁分身は消え去っていた。


「ああ!おじいさま、またぶんしんつかいやがったな!」


掴むものがなくなって手を空中にさ迷わせながら綱手は怒って言ったが、浅葱は安心したようだった。


『じゃあ綱手、私と一緒に商店街にでもいこうよ』

ぷんすかしていた綱手の前にしゃがみこんで提案した。


「うん、行く!」


綱手はハイと手を挙げて元気に言った。


「センリ様、いいんですか?」

『うん、もちろんいいよ。浅葱はこの後またすぐ仕事に行くんでしょ?』


昼休憩の後はまた浅葱が所属する暗号解析班での任務があった。センリにお礼を言って浅葱は綱手に迷惑をかけないよう念を推した。


「家にいてもつまらない!ばあやはうるさいし」

センリと手を繋ぎながら町に繰り出した綱手が口を尖らせていじけたように言っていた。
ばあやというのは柱間の家に仕える使用人だった。ミトがいればいいのだが、父親が労弱して床に伏せてしまった為、今は渦潮隠れに一時帰省している。
母も父も任務で忙しい上、まだ学校に通える年齢ではないので綱手の遊び相手といえば使用人か、たまに家に来るセンリくらいだった。


『でもたまにはばあやの言う事も聞いてあげないとダメだよ。みんな綱手の事がすきだから世話を焼くんだから』


綱手は茶色の瞳をセンリに向けてむすっとしたがその顔のまま一応頷いた。


『よしよし。じゃあ何処に行きたい?』

「やきとりたべたい!あとは、こうえんでかくれんぼしたい!あとかわであそびたい!」


綱手は嬉しさで跳び上がるようにしながらセンリの手にしがみついた。


『よーし、じゃあ今日は焼き鳥食べてから、公園ね。それで今度川で遊ぼう』

「分かった!」


我が強いところもあるが綱手は素直だった。元気溌剌といった綱手を見ていると、センリは柱間の事を思い出した。
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