木ノ葉隠れ創設編

-繋がり-


里の様子はだんだん変わっていったが、マダラとイズナとセンリの関係は何があっても崩れなかった。幼い頃と違い、お互いにそれぞれの仕事や立場があり毎日会っている訳では無かったが、それでも心の距離が離れたりはしなかった。

回数は多くは無かったが、マダラとイズナがそれぞれ仕事が早めに終われば食事を共にする事があった。センリとしては三人で夜の商店街に繰り出しても良かったのだがイズナはそういうときは決まって「姉さんの手料理が食べたい」と言うので、結局いつも自宅で三人でゆっくり食事をしていた。


イズナも四十を目前に控え、若々しいとは言えなくなってきてはいたが柱間のように実際の歳より随分若く見えていた。あの小さかったイズナが、マダラが、と考えるとやはり何か胸に込み上げるものがある。

見掛けだけではなくその考えも昔とは変わった兄弟の様子をセンリはいつも笑みを浮かべて見ていた。


「それにしても…兄さんの方が若く見えるのはやっぱり変な感じだな」


現実はイズナの方が弟だが、初見で二人を見た人間は友人関係かと思うかもしれない。晩酌の焼酎を少しずつ口に含みながら顔を赤らめている弟を見てマダラはふっと笑った。


「そうか?別にそんなにお前と変わらないと思うが…」

マダラの外見は三十歳でとまっているが、イズナはそれと同世代に見えるくらいだったので、マダラはそんなに気にしていなかった。


「まあ確かに自分でも実年齢より若く見えるとは思ってるけど……それに体力も全然衰えてないし。で、それについて思ってたんだけど、これってもしかして姉さんの力じゃないか?」


二人の会話を聞いていると突然イズナが訪ねてくるのでセンリはテーブルに肘を付いていた体を起こした。


『えっ、私の…。なるほど…あの時人を生き返らせる術は初めて使ったから…。確かにちょっと力を込めすぎちゃったりしたかもしれないな。カルマの力も入ってるだろうから、不老に近くはなったのかな?』

「やっぱり。歳をとる事になんだか体が軽くなっていくような気がしていたからおかしいとは思ってたけど…」


苦笑いをするセンリを見てイズナは納得したように首を振った。センリは申し訳無さそうだったがイズナはむしろ嬉しげだった。


「いや、ボクにとってはいい事だよ。これなら写輪眼が無くても兄さんに勝てるかもしれない」

「それは困るな。柱間以上の脅威だ」


イズナは冗談っぽく言って二人は同じようにニヤリと笑う。やはり笑顔を浮かべるとその表情は似通っている。


何だかんだで小さな頃から協力し合いお互いを高め合ってきたマダラとイズナは大人になってもその頃の面影があった。


『ふふふ。二人は大人になっても仲が良いね』

センリが楽しそうに笑って言うので二人は互いの顔を見合わせた。


「確かにイズナとは喧嘩らしい喧嘩をした事がないな」

「そうだね。兄さんはボクにとっての憧れだったから歯向かおうなんて思わなかったし」


二人は記憶を辿り思い返して言ったが、センリはえっと驚いて目をぱちくりさせた。


『えっ、もしかして二人共覚えてないの?』


センリはマダラとイズナに問い掛けるが二人は訳が分からず不思議そうに見返してくるだけだった。


『小さい頃一回喧嘩した事あったじゃない』

「ええ、いつ?」


センリの言葉にイズナがびっくりして聞き返す。本当に覚えてないのかとセンリは察知して話し出した。


『私がうちは一族に置いてもらってすぐくらいだったかなあ。私が一日マダラと修業してたら遅くなってイズナとのお風呂の時間に間に合わなくなっちゃってさ。帰ったらイズナがめちゃくちゃ怒ってて「兄さんの馬鹿!」とか言ってね。そしたら、マダラも修業で疲れてたんだろうね…「一々文句言うな」って冷たくしちゃってさ。それでイズナは号泣して……寝る頃には仲直りしてたけど、ああ、喧嘩もするんだなあって思ってたよ。確かにそこから先は、私がいる間も喧嘩っていう喧嘩はしてなかったけど』


センリの話す内容をよくよく考えてみると遠い記憶に確かにそんな事があったようでもない気がしてマダラは笑った。


「そういえば……ガキの頃イズナが大泣きしていた時があったが…その時か」


思い出したようなマダラとは裏腹にイズナはまだ首に手を当て考えていた。その頃マダラは七歳だったので微かに記憶に残ってはいたが、イズナは四歳。覚えていないのも無理はない。


「兄さんてその頃から姉さんが大好きだったんだな…弟にそんな酷い事を言うなんて」


自分だけ覚えていない事が癪だったのかイズナはニヤニヤしてマダラに言った。


『ええっ、マダラったらそんな時からそんな事思ってたの?ませてるなあ』

「文句あんのか」


何故か喧嘩腰のマダラを見てイズナは笑った。


『喧嘩はしてなかったけど、イズナはよくタジマくんに怒られて、地面に頭がつくんじゃないかってくらい落ち込んでたよね』

「ああ…それは覚えてる。あの人、厳しかったから」


センリにとってはごく最近のような出来事だが、イズナにとっては遠い昔の話だ。懐かしむような声にセンリは微笑んだ。
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