- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-友の死-


里には柱間もマダラもいて火影室に入ると見慣れた火影の顔が目に入った。


「センリ、本当に良くやってくれた」


七尾がかけていた事は柱間は全く気にしていなかった。それどころか嬉しげに表情を崩している。


『長明……一人いないけど問題無いようなら良かった』

「五匹でも十分過ぎるくらいぞ!まさか本当に連れてこられるとは思っていなかったんだが…さすがはセンリぞ。すでに会談を開きたいとの趣旨の書状を各国に送った。返事はまだだが、十中八九これで戦争は集結するだろう」


柱間の言葉にセンリは安心した。その為かふっと体の力が抜けてしまいふらついた。


「センリ、大丈夫か?」


センリが地面に倒れる前にマダラがその体を支えた。


『ごめん、安心したら一気に力が抜けちゃった。柱間…ちょっと休んでいいかな』

センリは膝をつきながら問い掛けると柱間は数回首を縦に振った。


「もちろんぞ。尾獣探しに加え木ノ葉の忍達の応戦や治癒までしてくれていた事は皆から聞いている。五ヶ月も走り回ればそれは疲れただろう。家に帰ってゆっくりするといい。マダラ、センリを自宅まで運んでやってくれ」


マダラは頷くとセンリに背中を向ける。


「センリ、乗れるか?」


センリは何とか体に力を入れてマダラの背にもたれ掛かった。

離れていたのは数ヶ月だというのに自分がおぶさってもびくともしないその背中が少しだけ懐かしく感じた。


センリは自宅に帰る道中、揺られながら大きな背中に身を預けていた。正確な時間は分からなかったが、月の角度から見て夜の八時くらいだろうか。センリはふとマダラに問い掛ける。


『マダラ、怪我はしてない?ご飯ちゃんと食べてた?』


疲れているのかいつもより幾分か小さなセンリの声がマダラの耳元で聞こえた。


「大丈夫だ。飯もちゃんと食っていたし、問題ない」

『そっか、良かった…』

「お前こそ大丈夫なんだろうな。今は尾獣が体に封印されているんだろ」


尾獣を一匹封印して人柱力になるのだって並大抵の人間には難しい。それが今センリの体の中にいるのは五匹だ。普通なら生きているのがおかしなレベルだ。


『ん…大丈夫……』


センリの声はささやき声に近く、これは寝るだろうなとマダラは予想していたが、その通りだった。そのうちに規則正しい呼吸音が聞こえてきて自宅に着くまでの間マダラは眠ったセンリを背中に乗せて歩いた。


しかし自宅に到着し、センリをベッドの上に降ろすと珍しくその瞳が開いた。


『ん……マダラ、わたし、何日もお風呂…入ってないから…』


起き上がろうとするセンリの肩をマダラは押し返した。


「いいからそのまま眠ってろ。体なら後で俺が拭いておいてやるから…もう休め。明日になったら話す事もある。風呂はいいからそのまま眠れ」

『でも、』

「いいから言う通りにしろ」


厳しく命令する口調では無く、優しく諭すような声にセンリはゆっくりと瞬きをした後に完全に目を瞑った。その様子から見て殆ど寝ずに探し回っていた事が見て取れてマダラはいたわる様にその頭を撫でた。

何日も風呂に入らずに歩き回っていたとは思えない程センリの髪は滑らかで、その肌からもいつもの花のような香りがした。

熟睡しているセンリを見て安堵の感情が遅れてマダラの心に湧いた。


「……おかえり」


小さく呟いて美しい寝顔に口付けると、途端にセンリへのいとおしさが込み上げてきた。話したい事もたくさんあったが、今はセンリの体力が回復するのが先だ。

これからまた少し忙しくなるだろうと思ってマダラはベッドから腰を上げ、再び柱間の元へと戻った。
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