- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-尾獣との絆-


六尾の犀犬、七尾の長明と八尾の牛鬼を探している道中センリは鬱蒼とした森の中で二人の負傷した忍を発見した。

枝々を飛び移りながらセンリが三匹の気配を探していると何キロか先に人間の気配があり、そのチャクラが限りなく弱かった為負傷者がいると推測しているとすぐにその忍達が目下に現れた。

センリは咄嗟にスピードを緩めてその忍達の元に降り立ち、地面に足をつけると忍がすぐに反応した。

目に入ったのは二人の忍で、上半身が血塗れになった忍が一人地面に横たわっていてセンリの気配を察知するともう一人の忍が庇う様に立ち上がった。


「木ノ葉隠れの忍か…!」

クナイを突き出したのは小柄な男の忍で、茶髪に団子鼻が目立つ青年だった。額当ては岩隠れのものだ。威勢よく体制を整えたは良いが、どうやら怪我をしているらしく、血で真っ赤な右肩を押さえていた。しかし後ろで横たわる忍はそれよりも重傷で早く手当てをしなければとセンリは思った。


『待って、大丈夫、あなた達を攻撃する気はないよ!怪我を治すだけ!』


十メートル程離れた地点からセンリが声をかけるが小柄な忍は体制を崩さない。


「何を言っている!信じられるか!やるなら早く掛かってこい!」


敵意むき出しといった形相で今にも飛び掛ってきそうだった。だが忍は言い終わると突然吐血し、口を押さえ地面に膝から崩れ落ちた。


『大丈夫!?』

「…!」


センリが駆け寄ってくるのでどうにか攻撃しようと青年はクナイを突き付けようとしたが、それもままならないくらいには負傷していた。死に物狂いでクナイを振り上げたが、センリはそれを避けなかった。クナイはセンリの太股付近に突き刺さったが、センリは動じない。痛みに微かに眉を動かしたが、クナイを持つ青年の手を上から握り締める。


『大丈夫、本当に戦う気は無いから』


怪我人の忍くらい殺そうと思えばすぐにそう出来るはずなのに、攻撃を受けても動きもしないセンリを見て青年は驚愕した。

センリが一体何者なのか考えようとしたが、青年はもう一度口から血を吐きクナイから手を離して地面に崩れた。センリはクナイを引き抜き青年の側にしゃがみ込んだ。


『毒だね?ちょっと待ってて、すぐに治すから…』

センリを信用した訳ではなくただ力が尽きてしまった青年の腹に手をかざす。ほう、と白いチャクラがセンリの手を覆う様に現れて、あたたかな感覚が青年の腹に走ったかと思うと徐々に自分の中の毒がなくなっていくのが分かった。

何故毒が吸い取られる様になくなっていくのか全く仕組みは分からなかったが、もしかすると本当に敵意が無いのかもしれないと青年は頭の隅で考えていた。

数十秒もすると全身に走っていた針が刺さる様な鋭い痛みが消え、少し痺れが残る程度になっていた。


「あんた、何で、」

『ちょっと待って、この人の傷を治してからあなたの傷を治すから』


純粋な疑問が浮かんできて問うたが、センリは青年を制して横たわる忍に近付く。殺される、という予測は何故か青年の頭には無かった。

センリは横たわる忍の横に膝をつく。
目元以外の上半身に包帯を巻いた忍は白い布の殆どが赤く染まっていた。目を閉じ、微かだが息はしている。


『この傷か…それに足も粉砕骨折してるね…』


致命傷と思われる肩から胸にかけて切り裂かれた肌にセンリは同じ様に手をかざす。一部骨が見える程の状態だったが、センリの白いチャクラが現れるとまるで逆再生したかのように傷が塞がっていく。右足の足首辺りにも同じ様に手をかざす。

包帯は赤く染まったままだったが、完全に傷は治った様で苦痛の表情で眉を寄せていた忍は、その表情がすうっと柔らかくなった。気を失っている様で目を覚ましはしなかったが、センリは一安心して再び青年の方を向いた。


『肩、見せて』

青年は一瞬戸惑いを見せたがセンリが微笑みを浮かべるとゆっくりと肩を押さえていた手を外した。


『毒入りの刀か何かだね…。大丈夫、すぐ治るよ』

言葉の通りセンリが青年の肩に手をやるとチャクラに包まれて、傷の痛みが徐々に引いていった。まだ体が痺れてはいたが青年はセンリの行動をじっと見ているだけだった。


『……よし、もう大丈夫。この人ももう大丈夫だよ。毒で意識がないだけでもう少しすれば目を覚ますと思うんだけど、』

「あんた、木ノ葉隠れの忍じゃないのか?」


センリの言葉が言い終わらないうちにそれを遮って青年が問い掛ける。鋭い口調だった。


『え、あ、うん。木ノ葉だけど…』


それがどうしたのだというふうにセンリが言うので青年は訳が分からず眉を顰めた。


「何故オレ達を助けた?」


青年は混乱していた。敵だというのに自分達を助ける意味が分からなかった。

センリの行動はまるで自分達に攻撃する気がなかった。それじゃなかったら自分に無防備に背を向けて重傷を受けた忍の傷を治すはずが無い。敵に背を向けるなど普通なら有り得ない事だった。

しかしそれを聞かれてもセンリは何の動揺も見せなかった。


『何でって…走ってる時に怪我してるあなた達を見かけたから』

事も無げに言うセンリに青年の混乱はますます増すばかりだった。


「見かけたからって……今は戦争中だぞ!何をおかしな事を言ってる!」


訳の分からない苛々の様な疑問が青年の口から勝手に転がり落ちたが、センリはまるでそれを包み込む様な微かな微笑を見せた。
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