- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-第1次忍界大戦-


イズナはヒカクの死に目に立ち会えなかった事を悔やんではいたが、すぐに現状は受け入れた。仲間の死を受け入れるという事は安易では無いが、戦国時代を過ごして来たあの時に比べればまだ今はましな方ではあった。それでも着々と死者は増えつつあった。



戦争開始時期から約一年が経ったある日の夜。
その日は満月で、まだ一日死傷者は木ノ葉に運ばれては来ていなかったので、数日前戦場に向かったマダラの帰りを待ちながらセンリはヤヨイの甘味処に久々に顔を見せに来ていた。


めっきり忍の客が来なくなったと少し寂しげなヤヨイを元気付けるように励ましていた時だった。

「?……センリさん、どこかから花火の音が聞こえませんか?」

ヤヨイがふと耳を澄ますような表情をして問いかけた。センリは笑うのをやめて、じっと周囲の音を探った。

『…………?』


どこか、かなり遠い場所から、確かに花火が打ち上がる時のような鈍い音が聞こえた。

センリが眉を少し寄せた時、突然外の道を何人かが駆けてくる音が聞こえて、すぐにそれは店の前で止まった。そして暖簾から顔を出したのはセンリが良く知る日向一族の忍だった。白眼を使っていた様で焦っている様子にセンリがどうしたのかと声を掛ける前に忍が切羽詰まって言った。


「こんな所に居たのですか!探したのですよ!」


もしかして自分を探す為に白眼を使っていたのかとセンリが考える暇もなく忍が近付いて来た。焦る、というより何か恐怖に怯えた様な顔だ。


『どうしたの?』

「九尾の妖狐が里近くに突然現れたと連絡があったのです!火影様とマダラ様が応戦しているようですが、センリ様に知らせろと…!」


九尾、という想定外の言葉にセンリは目を丸くする。しかしすぐに“花火のような音”の正体が分かり、ヤヨイにまたねを言ってから暖簾を潜って急いで里の門に向かう。


『場所は分かる?』

「ここから見て四時の方向…約二十キロ地点です!」


隣を走る日向の忍に尋ねると白眼で夜の空を見上げて場所を把握した。センリはその方向を見る。チャクラが使えないので結界に反応があったのか分からない。


『近いね』


小さく呟いてセンリは門に走って近付く。門番の忍にはあらかじめ説明してあったのか何も言われなかった。


「九尾の攻撃を受けた忍は何人かこちらに帰還してきている途中だそうです。扉間様はかなり離れた国境付近で砂隠れと戦闘中なのでこちらに向かうのは無理かと」

『分かった。他の里の人達は里から出さないようにお願い』


日向の忍がセンリの言葉に短く頷く。
それを言うとセンリは髪を紐で結び、門を出て里外に走った。



『(四時の方向に二十キロ……あの大きな滝がある辺りか………二十キロくらいならチャクラ無しでも走っていける…)』


森の木々の間ではなくなるべく平坦な地面を選びながらセンリはその方向に走る。


『(カルマ…カルマ………やっぱり燃焼日だからダメか)』


夜だが満月の日は月の光で道を走っていけるくらい明るい。走りながらセンリはカルマに呼び掛けをかけてみたがやはり燃焼日なので反応はない。

だが燃焼日だろうとクラマの所に行かなければならない。何故木ノ葉隠れの近くに現れ柱間達と戦っているのか分からないが、とにかく現場に行って確かめなければならないという目標がセンリの頭の中にあった。


センリはひたすら夜道を走る。

チャクラが使えなくとも元々運動神経は良で体力もある方だ。出来る限り速く足を動かしてセンリは周辺に耳を澄ます。


『(……クラマの声…!?)』


自分の呼吸音を限界まで抑えて耳を澄ますと、微かだが獣の鳴き声が聞こえた。その方向は四時。ハゴロモ達と過ごした時より低く、地を揺るがすような音だったが、確かにクラマの鳴き声で間違いはないのかもしれない。


『(あと半分くらい…!)』


鳴き声を確認するとより速くとセンリの足が急いだ。

そしてやっと森が開けて平地に出ると向かって右側約十キロ地点、四時の方向に何か大きな青いチャクラの塊が見えた。センリの所から見えるくらい巨大で、ゆらゆらと動いている様に見えた。


『あれは…マダラの、須佐能乎…?』


近付くにつれてセンリの予想が的中した事に気付く。残り数キロ地点になればそれは確信に変わっていた。青いチャクラに包まれた二面四腕の鬼、マダラの須佐能乎だ。

そして須佐能乎の先に、暴れ回る橙色の獣の姿が見えた。

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