- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-第1次忍界大戦-


戦争の規模は柱間が予想していたよりも酷く、大きなものだった。すでに他の里では多くの忍達が戦死しているとの情報も入った。

すぐに火の国にも他国の忍が攻め入って来ていて、それは確実にこれからの戦争を意味していた。


それでも戦場にまだ子ども達を戦いに向かわせなければならない程劣勢ではなく、センリは戦いに行っては傷付いて帰ってくる忍を里で治療する医療班に回った。


育成学校の教師達も何人か戦場に行かなくてはならず、イズナは里に残る事を唇を噛み締めて悔やんでいたが、それでも子ども達を守るという事は重要な事だった。イズナは子ども達には戦闘の技術よりも身を守る術を多く教えた。


浅葱は十六歳を迎えていた為前線では無かったが、たまに戦にも出ていた。柱間程の実力は無いが、戦いで劣勢になる事はなく、傷を負いながらも帰ってくるのでミトはその顔を見る度安心していた。ミトは元々戦場に出て戦う一族では無かったので戦には出なかったが、ミトの心配心はセンリも分かっていたので忙しい任務の合間を縫って彼女の所にも出向いていた。


里内の、特に忍では無い商人や一般人は戦争が起きているとは分かってはいたが、普段とはあまり変わらない日常を送っていた。里には敵が侵入する確率はほぼ無いに等しかったし、戦いに出るのは忍達なので戦争がどのような状況なのかも知らない者が多かった。ただ今までより明らかに商店街で忍を見かけなくなって、里外では確かに戦いが起きている事だけは理解していた。商店街の人々や甘味処のヤヨイにも心配をかけないように、顔を出す事もセンリはしていた。



毎日忍達が里に戻ってくる訳では無かったが、負傷した忍が少なくなる事は無かった。センリは忍達の治療に全力で当たった。他にも里で待機する医療班はいたが、戦場についていっている忍の方が多かった為、怪我人の方が多すぎて切羽詰まってしまう事もよくあった。今までの様に満月の日にチャクラが使えないのは本当に悔しかったが、センリの治癒のお陰で殆どの忍の傷は治すことが出来た。

センリは医療忍者の者達が治せない様な重傷者を主に見ていたが、血だらけの忍を見て何年か前の戦争を思い出した。あの時とまるで同じだった。


「うちはの忍達がセンリ様の事を光の巫女だとか、救いの女神だとか言っていたのは知っていましたが…本当にその通りですね。センリ様がいれば木ノ葉隠れはすぐにでも戦争に勝利するでしょう」


このような言葉を幾度も言われた。純粋なお礼を言われればもちろん嬉しくはなる。ただ戦国時代と違うのは、一族間ではなく、怪我を治す忍は木ノ葉隠れの忍だということだった。



封印術が弱まった時にカルマにも現状を説明をした。里の忍と同じ様に驚く事はなく、むしろ「やはりそうなったか」と小さく呟いていた。


「センリよ、御主のせいではない。インドラとアシュラの魂がこの世に無くとも戦争は起こってしまうものだ。今の現実では、な…」


センリの伏せた瞳に気付き、元気付けるようにカルマはその肩に手を置いた。

センリも分かっていた。戦争は始まってしまったなら止めるしかない。話し合いが無理なら、戦って力ずくでもこちらの話を聞いてもらう機会を作ればいい。その為には、何にせよとにかく早く今の戦争を終わらせる事が第一だ。


例え重傷を追ったとしても里まで帰って来ることが出来た者はほぼ確実にセンリが治せる。しかし戦いに行った場で命に関わる致命傷を負えば班にいる医療忍者では限界がある。その場で敵に殺られてしまう忍も少なからずいた。

帰った忍達の口から殉職者の名前を聞くのは辛いものだった。だんだんと殉職者リストが長くなっていくにつれて早く戦争を終わらせなければという気持ちが強くなった。柱間はもちろん、センリもマダラも扉間もそれは同じだった。
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