- ナノ -


木ノ葉隠れ創設編

-第1次忍界大戦-


その後族長や手練の忍達を扉間が集め、柱間の口から直々に説明がされた。皆驚嘆した様子だったがすぐに状況を呑み込み、家族へ報告や、センリのように武器等の整理の為に一旦散っていった。


それからすぐに柱間やマダラを中心に話し合いがなされ、忍の隊が組まれた。朝から早急に話は進められたが、柱間もマダラも慎重だった。しかしその日の陽が暮れる前には全ての部隊を組む事が出来た。


里内の半数以上は戦国時代を生き抜いた忍達だったので再びの戦闘をすぐに理解して、皆里を守る為に戦うつもりでいた。


攻撃派(その中でも近・中・遠距離別が分かれる)、感知タイプ、情報を伝える忍をそれぞれの隊に力量を考えながら満遍なく組み込まれた。各班の隊長には殆ど戦国時代を生き抜いた手練の忍達が抜擢される。桃華やヒカク、猿飛サスケなどのよく見知った忍の名前がセンリの目に映った。


里内の大人の忍はすでに千人以上はいたが、まずは約半数が戦場の確認を含めて真夜中に里を旅立って行った。まだ戦いの程度が分からない為、隊には十六歳以下の子どもは含まれていなかった。


『桃華、気を付けてね』

「分かっている。大丈夫だ、すぐに勝って帰ってきてみせる」


桃華は戦争が始まると聞いても全く動揺した様子を見せなかった。十数年前とあまり変わりのない、きちんと戦いを理解している凛々しい顔付きだった。木ノ葉隠れの額当てを頭へと結びながら薄くセンリに笑みを向けて正門から隊を従え夜の闇へ消えて行った。


全ての隊を門から見送るとセンリはすぐに柱間に問い掛けた。


『柱間、他の影達に連絡は…』


柱間は朝に五里の他の影達にこれ以上火の国に攻め入るのを止めるよう書状を出していた。しかし柱間は芳しくない表情で首を横に振った。


「砂と霧からは返事が届いたが、どちらも戦いをやめるつもりは無い、と。同盟を組んでいた岩隠れからの連絡は無い。もし岩隠れの忍が火の国に攻めてきたとしたならばそれは同盟破棄という事になる。もう後には退けなくなった」


いつもの火影服ではなく、いつでも戦いに参加できるよう戦国時代と同じ赤い甲冑を身に纏った柱間の黒い瞳はやはり悲しげだった。


『話し合いでは解決出来ない、って事か…』


センリは忍達が旅立って行った里外に伸びる道を見つめた。どうか皆が無事であっていてくれという祈りの視線だった。


『大丈夫だよ、柱間。戦国時代だって終わらせる事が出来たんだから。今度だって必ず…大丈夫』


柱間はいつかのセンリと同じ今の金色の瞳を見下ろした。変わらず強い瞳だった。柱間は自然と首を縦に振っていた。


『じゃあ柱間、私は里の周りに結界を張ってくるよ。今も木ノ葉隠れをぴったり覆うように感知結界があるけど……里の人達が絶対巻き込まれないよう百キロ四方くらいに張る。感知結界じゃないけど、攻撃は効かない結界だから』


言いながらセンリは手のひら近くの右腕に左手をかざす。するとセンリの左手に弓矢が現れた。
センリは戦闘時はあらかじめ手首周辺に武器の術式を描いておき、そこに手をかざすだけでその武器が呼び寄せられる仕組みをとっている。戦いの際よくセンリはこうして刀等を取り出していたと、少し懐かしい記憶が柱間に走った。


「助かる、センリ。しかし…体に負担がかかるのではないか?」


百キロ四方の防御結界など並の人間には作り出せない。驚くよりセンリへの負担の方が柱間は気に掛かった。しかしセンリは振り返って大丈夫だと大きく頷いた。


『割と簡単な術だし、期間を限定すれば負担もかからないし、大丈夫』


センリは矢を肩に掛けて柱間を安心させる様に笑みを返すと里の門を出て行きすぐに姿が見えなくなった。

今度の戦争にはセンリが味方にいると分かって何処か安心してしまう自分がいて柱間はそれを振り払うように瞳をぎゅっと瞑った。

                ・・・
「(そうだ…オレは、オレの…いや、オレ達の里を絶対に守る)」


柱間はマダラが待つ火影室に向かって足を踏み出した。
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